障害状態要件(聴覚障害)

2.「聴覚障害」の障害状態要件

※上記画像と本文の内容とは無関係です。

 

【目次】

<障害が「耳」の範囲内に限られる場合>

2-1:両耳の聴覚障害に係る障害状態要件

2-2:一耳の聴覚障害に係る障害状態要件

 

【注1】以下、根拠条文等について、次のように略記する場合があります。

・「節」は「障害認定基準」、「欄」は「診断書」を指すものとします。

 例1)「認定基準第3第1章第2節」→「第2節」

 例2)「聴覚等の障害用の診断書(様式120号の2)第10欄」→「第10欄」

  ※聴覚障害の場合、前記様式を用います。

  ※複数の障害が併存する重複障害で請求する場合、様式の異なる複数の診断書を用いる場合があります。

  →診断書の様式が異なる場合、同種の記載欄の番号が本頁記載のものとは異なる場合があります。

【注2】本頁の例示は、認定基準の例示及び公開情報から推察し構築したものも含む場合があります。

 ※「公開情報」:障害年金の認定に関する専門家会合の議事録等。

 

2-1.両耳の聴覚障害の障害状態要件

■「両耳の聴覚障害」の原因となった請求傷病による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当すること(国年令別表、厚年令別表第1、同第2、認定基準第3第1章第2節1)。

 

※「請求傷病」:聴覚障害の原因傷病。

 例1)メニエール病

 例2)感音性難聴

 例3)特発性難聴

 例4)頭部外傷による内耳障害

  例4-1)小脳出血

 例5)音響外傷による内耳障害

 例6)薬物中毒による内耳障害

  例6-1)ストレプトマイシンによる難聴

 例7)髄膜炎

 

【聴覚障害に関する用語の説明】

※「聴力レベル」:JIS規格又はこれに準ずる標準オージオメータ(聴力測定器)を用いて測定した所定の周波数毎の純音(単一の周波数成分で構成される音)による聴力レベル値(純音聴力レベル値)に基づいて、所定の計算式により算出平均した平均純音聴力レベル値(単位はデシベル:dB)をいい、診断書に記載してもらう必要のあるものです(認定基準第3第1章第2節2(1)(2)、診断書様式第120号の2第10欄(1))。

 

※「平均純音聴力レベル値」:会話の理解に必要とされる話声域(500~2000Hz)を中心とした各検査音(所定の周波数の純音)の純音聴力レベル値について、単純平均ではなく、以下のいずれかの計算式によって算出平均したデシベル値(dB)をいいます(認定基準第3第1章第2節2(2)、診断書様式第120号の2「記入上の注意」4(3))。

(1)4分式による平均純音聴力レベル値=(a+2b+c)/4

(2)6分式による平均純音聴力レベル値=(a+2b+2c+d)/6

ここでa~dとは、以下を意味します。

a: 周波数500Hzの純音聴力レベル値

b: 周波数1000Hzの純音聴力レベル値

c: 周波数2000Hzの純音聴力レベル値

d: 周波数4000Hzの純音聴力レベル値

 

<「6分式」で計算する必要がある場合>

平均純音聴力レベル値が境界値に近い(例えば1級と2級の境界値である100dB近辺の)場合や、職務上の聴覚障害について船員保険に基づく請求をする場合、周波数4000Hzの純音聴力レベル値も算定基礎に含めた6分式による平均純音聴力レベル値(聴力レベル)を診断書に記載してもらう必要があります(認定基準第3第1章第2節2(2)、診断書様式第120号の2「記入上の注意」4(3))。

加えて、船員保険に基づく職務上の請求傷病が「騒音性難聴」である場合、平均純音聴力レベル値の算定基礎でない周波数8000Hzの純音聴力レベル値も、診断書裏面「オージオグラム」に記載してもらう必要があります(診断書様式第120号の2第10欄括弧書)。

 

【聴力検査の種類】

聴力検査には、次の3つの種類があります。

(1)純音聴力検査:純音による聴力検査において純音聴力レベル値を測定するもの。

(2)語音聴力検査:語音による聴力検査において語音明瞭度の聴力検査値の測定するもの。

(3)他覚的聴力検査又はこれに相当する検査:聴性脳幹反応検査等による聴力も測定するもの。

 

※「純音聴力検査」:純音オージオメータ(純音聴力測定器)が電気的に発生可能な種々の周波数の純音(単一の周波数成分の音)のうち、所定の周波数の純音(検査音)の強さ(音圧)を加減して被検者に聴かせ、その認知応答(聴こえたらボタンを押す等)によって、各純音毎の最小可聴閾値(純音聴力レベル値)を測定する自覚的聴力検査です。

 

※ 「語音聴力検査」:予め検査語を録音して再生出力するための「録音器」又は検者が発声する検査語を被検者に聴かせるための「マイク」付オージオメータを用いて、検査語の音量を任意に適当な音圧で調節し、聴力検査値(語音明瞭度)を測定する自覚的聴力検査をいいます。具体的には、検者は、オージオメータの音量を適当に強めたり弱めたりして最も適した状態のもとで、通常の会話の強さで所定の語音集による検査語を2秒から1秒に1語の割合で発声し、検査語数に対する正当語音数の割合(語音明瞭度)を算出します。そのうち最も高い値を「最良語音明瞭度」(語音弁別能)といい、両耳それぞれの検査値(%)が診断書に記載されます(認定基準第3第1章第2節2(3)、診断書様式第120号の2第10欄(1)、同裏面「記入上の注意」4(2))。

 

※「他覚的聴力検査」:代表例としては、次の3つが挙げられます。

(1)聴性脳幹反応(ABR:Auditory brainstem response)検査

「ABR検査」とは、脳波聴力検査とも呼ばれ、聴力を直接測定するものではなく、耳からの音刺激に対する脳の反応(脳幹反応:聴覚伝導路由来の脳誘発電位)として生じたインパルス(活動電位)を記録・解析して図示された脳波の変化から異常部位を特定する他覚的聴力検査をいいます。具体的には、ベッドに横たわり、両耳たぶと頭部(頭頂部と前額部)の計4箇所に脳波計の電極を取り付け、安静閉眼状態でヘッドホンから一定の音(周波数特性をもたないクリック音)を聴かせ、その音に対する脳波の波形を確認します。

その波形の各ピークの起源は、Ⅰ波:蝸牛神経、Ⅱ波:橋延髄接合部、Ⅲ波:橋尾側(上オリーブ核)、Ⅳ波:橋吻側、Ⅴ波:中脳(中脳下丘)、Ⅵ波:内側膝状体、Ⅶ波:聴皮質とされます。その波形の変化(Ⅰ~Ⅶ波の出現の有無、増幅又は減衰消失)から聴神経の伝達経路における異常部位が特定できるため、聴神経腫瘍、意識障害、多発性硬化症、脳死の判定等、難聴や脳幹障害の診断に用いられています。

ABRのⅤ波の出現閾値が最小可聴閾値(自覚聴力閾値)とほぼ一致することを利用すれば、脳波から間接的に聴力の測定が可能です。本人の意識や睡眠状態の影響を受けにくいため客観性に優れ、極めて再現性の良い安定した波形が得られるため信頼度は高く、機能性難聴の診断では理想的な検査方法とされています。

なお、機能性難聴とは、外耳、中耳、内耳、蝸牛神経及び脳幹等に明らかな障害がみられない(器質性障害の異常所見がない)にも拘わらず、純音聴力検査等の自覚的聴力検査では異常所見がある状態をいい、これには原因不明の「真の機能性難聴(非器質性難聴)」、精神ストレスが原因の「心因性難聴」、意図的に難聴を装う「詐聴」があります。

(2)聴性定常反応(ASSR:Auditory steady-state responce)検査

「ASSR検査」とは、耳からの音刺激に対する反応脳波の微弱な電流を記録・解析し、ABR(聴性脳幹反応)では分からない周波数別(250Hz~8000Hz)の聴力を推定する他覚的聴力検査をいいます。 音に対する被検者の応答が不要なため、自覚的聴力検査ができない乳幼児、発達障害児、機能性難聴の方にも有効な検査方法です。両耳同時・片耳4周波数同時検査ができるASSR測定器もありますが、体動により検査遂行が困難となる場合があるため、安静保持を目的として睡眠導入剤を投与し、睡眠下で測定することもあります。

(3)条件詮索反応(COR:Conditioned orientation response)検査

「COR検査」とは、 音と光によって動作の条件づけを行った後、音のみ出し、その反応をみる他覚的聴力検査をいいます。具体的には、被検者(幼児等)の前方の左右両側に電灯のつく人形とスピーカーを置き、人形が光って音が出たきにボタンを押す等、動作の条件づけを行った後、音のみ出し、その反応をみます。人形が光っていないのに音のみで反射的にボタンを押してしまうことがあれば、それは聴こえがあることを示します。

 

※「他覚的聴力検査に相当する検査」:代表例としては、次の3つが挙げられます。

(1)遅延側音検査(Delayed side tone test):例えば、被検者に数字を50から逆順に言わせるなど適当な言葉を暗唱させ、それを録音しながら直ちに(0.2秒遅らせて)再生し(すなわち遅延側音を)聴かせると、当該側音が聴こえている限り、①声が大きくなる、②時間が掛かる、③発語が乱れる、という3つの効果(遅延側音効果)が現れることを利用した聴力検査をいい、詐聴を診断する方法の一つです。

(2)ロンパールテスト(Lombard test):本を読ませるなど連続的に発語させつつ、60dB以上の白色雑音(全周波数帯域で強度が同じ雑音)や街頭雑音等を連続的に聴かせると、当該雑音が聴こえている限り、自然に声が大きくなるという「ロンパール現象」を利用した聴力検査をいいます。

(3)ステンゲルテスト(Stenger test):オージオメータを用いて、同じ音を両耳同時に聴かせ、その音の強さ(音圧)を適切に加減することにより、片側難聴の真の最小可聴値(閾値)を推定する方法をいい、具体的には、以下の手順を踏みます。

 ⓵ 片耳聴による可聴耳の閾値の測定

まず、ある周波数の純音が聴こえるという方の耳(可聴耳)の閾値を測ります。

 ② 両耳聴による可聴耳の閾値の再測定

次に、聴こえないという方の耳(難聴耳)が聴こえない範囲内で、かつ、なるべく大きい音の強さで、両耳同時に聴かせて、もう一度可聴耳の閾値を測ります。

 ③ 可聴耳の閾値の比較と難聴耳の閾値の推定

最後に、両測定値(可聴耳の閾値)を比較し、その差異をみます。

片耳聴及び両耳聴による可聴耳の閾値に大差がある場合、難聴耳に実は聴こえがあることを示します。真に片側難聴の場合、片耳聴及び両耳聴による可聴耳の閾値に大差はないはずです。大差がない場合、両耳聴の現象(同じ音を両耳に同時に聴かせると、強い方だけが聴こえて弱い方は聴こえなくなるという現象)を利用して、両耳聴による可聴耳の再計測値から、片耳聴で聴こえるはずの真の難聴耳の閾値を推定するわけです。

 

<併合認定される場合>

 例1)聴覚障害(特に内耳性聴覚障害)+平衡機能障害(認定基準第3第1章第2節2(7))。

 

【1級】(両耳の聴覚障害に係る障害の程度)

<1級相当の聴覚障害>

●「両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの」

 →障害等級1級2号(国年令別表第1級2号、認定基準第3第1章第2節1)

すなわち、両耳の平均純音聴力レベル値が100デシベル以上のもの(認定基準第3第1章第2節2(2))。

 

なお、本号に該当する聴覚障害は、併合認定では次の一つ(同じもの)に該当します。

(1)「両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの」

 →併1号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表1級1号の2)

 

<必要な聴力検査>

新規申請で本号の認定を受けるためには、次の3つの全ての聴力検査が必須となります。

(1)純音聴力検査:純音による聴力検査において純音聴力レベル値を測定するもの。

(2)語音聴力検査:語音による聴力検査において語音明瞭度の聴力検査値の測定するもの。

(3)他覚的聴力検査又はこれに相当する検査:聴性脳幹反応検査等による聴力も測定するもの。

 (認定基準第3第1章第2節2(7)、診断書様式第120号の2「記入上の注意」4(4))

 

<デシベル(dB)の目安(音源と距離)>

・120dB:ジェットエンジン(直近)、落雷(直近)

・110dB:飛行機の離着陸(直下)、自動車のクラクション(2m)

・100dB:電車の通過音(ガード下)、液圧プレス(1m)

 

【2級】(両耳の聴覚障害に係る障害の程度)

<2級相当の聴覚障害>

●「両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの」

 →障害等級2級2号(国年令別表第2級2号、認定基準第3第1章第2節1)

 

なお、本号に該当する聴覚障害は、併合認定では次の1つ(実質同一のもの)に該当します。

(1)「両耳の平均純音聴力レベル値が90デシベル以上のもの」

 →併3号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表2級3号の1)

 

<その他2級相当の両耳聴覚障害>

●「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第2節1)

すなわち、両耳の平均純音レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの(認定基準第3第1章第2節2(4))。

 

なお、本号に該当する聴覚障害は、併合認定では次の1つ(同じもの)に該当します。

(1)「両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの」

 →併3号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表2級3号の2)

 

【3級】(両耳の聴覚障害に係る障害の程度)

<3級相当の聴覚障害>

●「両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの」

 →障害等級3級2号(厚年令別表第1第2号、認定基準第3第1章第2節1)

すなわち、次の2つのいずれかに該当するもの(認定基準第3第1章第2節2(5))。

(1)両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの。

(2)両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの。

 

本号に該当する聴覚障害は、併合認定では次の4つに分かれます。

(1)「両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のもの」

 →併5号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表3級5号の3)

(2)「両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上80デシベル未満で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの」→併5号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表3級5号の4)

(3)「両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの」

 →併7号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表3級7号の1)

(4)「両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの」

 →併7号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表3級7号の2)

 

 

一耳の聴覚障害の障害状態要件

■「一耳の聴覚障害」の原因となった請求傷病による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当すること(厚年令別表第1、同第2、認定基準第3第1章第2節1)。

 

※「請求傷病」:前記「両耳の聴覚障害」における記載参照。

 

【3級】(一耳の聴覚障害に係る障害の程度)

<暫定的に3級認定される障害手当金相当の一耳の聴覚障害(治らないもの)>

●「傷病が治らないで、身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第2章別表1併合判定参考表3級9号及び10号)

すなわち、一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のものであって、治らないもの。

 (認定基準第3第2章別表1併合判定参考表3級9号の5、同10号の3)

 

なお、本号に該当する一耳の聴覚障害は、次の2つに分かれます。

(1)「一耳の平均純音聴力レベル値が90デシベル以上のもの(治らないもの)」

 →併9号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表3級9号の5)

(2)「一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のもの(治らないもの)」

 →併10号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表3級10号の3)

 

【障害手当金】(一耳の聴覚障害に係る障害の程度)

<障害手当金相当の聴覚障害(治ったもの)>

●「一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの」

 →障害手当金第6号(厚年令別表第2第6号、認定基準第3第1章第2節1)

すなわち、一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のものであって、治ったもの。

 (認定基準第3第1章第2節2(6))

 

なお、本号に該当する一耳の聴覚障害は、次の2つに分かれます。

(1)「一耳の平均純音聴力レベル値が90デシベル以上のもの(治ったもの)」

 →併9号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表障害手当金9号の5)

(2)「一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のもの(治ったもの)」

 →併10号(認定基準第3第2章別表1併合判定参考表障害手当金10号の3)