障害状態要件(高血圧症による障害)

17.「高血圧症による障害」の障害状態要件

※上記画像と本文の内容とは無関係です。

 

【目次】

17.「高血圧症による障害」の障害状態要件

 

【注1】以下、根拠条文等について、次のように略記する場合があります。

・「節」は「障害認定基準」、「欄」は「診断書」を指すものとします。

 例1)「認定基準第3第1章第17節」→「第17節」

 例2)「循環器疾患のの障害用」診断書(様式120号の6-(1))第12欄→「第12欄」

  ※高血圧症の診断書は、前記様式を用います。

  ※複数の障害が併存する重複障害で請求する場合、様式の異なる複数の診断書を用いる場合が多くなります。

  →診断書の様式が異なる場合、同種の記載欄の番号が本頁記載のものとは異なる場合があります。

【注2】本頁の例示は、認定基準の例示及び公開情報から推察し構築したものも含む場合があります。

 ※「公開情報」:障害年金の認定に関する専門家会合の議事録等。

 

17.「高血圧症による障害」の障害状態要件

■高血圧症(及び合併症)による障害の原因となった請求傷病による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第17節1)。

 

※「高血圧症(及び合併症)による障害」:悪性高血圧等。脳溢血による運動障害は除く。

※「請求傷病」:高血圧症(及び合併症)による障害の原因傷病。

 例1)悪性高血圧

 例2)高血圧性心疾患

 例3)高血圧性腎疾患

※「高血圧症」:動脈圧の計測値について、次の3つの全てを満たすもの(第17節2(1))。

 ① 動脈の最大血圧(収縮期血圧)が概ね「140mmHg」である。

 ⓶ 動脈の最小血圧(拡張期血圧)が概ね「90mmHg」である。

 ③ 前記①及び②の血圧は、いずれも「降圧薬服用下」における計測値である(同前「降圧薬服用」有)。

※「合併症」:次のような場合がある。詳細は第12欄7(5)に係る後述参照。

 例1)高血圧症+脳の障害(脳血管障害:高血圧性脳症、脳出血、くも膜下出血等)。

 例2)高血圧症+心疾患(急性心筋梗塞、急性冠症候群(不安定狭心症等)、高血圧性急性左心不全等)。

 例3)高血圧症+腎疾患(急性腎硬化症等)。

 例4)高血圧症+血管疾患(大動脈疾患(大動脈解離、大動脈瘤等)、動脈硬化性末梢動脈閉塞症等)。

 

●「高血圧症による障害」の障害状態要件は、主に診断書の記載事項を考慮して総合的に判断される。

 

※「診断書」:高血圧症による障害の場合、次の5つの様式の診断書の提出が考えられる(第17節2参考)。

 ① 高血圧症+脳の器質障害(神経障害・精神障害のうち、主に神経症状を呈するもの)の場合

  →「肢体の障害用」の診断書(様式120号の3)の記載が考慮される。

  →「神経系統の障害」の障害状態要件参照。

 ⓶ 高血圧症+脳の器質障害(神経障害・精神障害のうち、主に精神症状を呈するもの)の場合

  →「精神の障害用」の診断書(様式120号の4)の記載が考慮される。

  →「精神の障害」の障害状態要件参照。

 ③ 高血圧症(悪性高血圧症を含む。)+循環器疾患(心血管疾患)の場合

  →「循環器疾患の障害用」の診断書(様式120号の6-(1))の記載が考慮される。

  →本頁「高血圧による障害」及び「循環器機能障害」の障害状態要件参照。

 ④ 高血圧症(悪性高血圧症を除く。)+腎疾患(腎不全を呈するもの)の場合

  →「腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害用」の診断書(様式120号の6-(2))の記載が考慮される。

  →「腎機能障害」の障害状態要件参照。

 ⑤ 高血圧症+動脈硬化性末梢動脈閉塞症(運動障害が生じているもの)の場合

  →「肢体の障害用」の診断書(様式120号の3))の記載が考慮される。

  →「上肢の障害」「下肢の障害」「体幹・脊柱機能障害」又は「肢体広域機能障害」の障害状態要件参照。

 

Ⅰ.「高血圧症による障害」に係る診断書の記載における考慮要素(高血圧症と各心血管疾患の共通事項)

1.臨床所見(様式120号の6-(1)の場合(以下略):第11欄4)

(1)自覚症状:高血圧症又は各心血管疾患に基づくもの。他覚所見との連動性が確認される(第11節2(3))。

 ①「動悸」(無・有・著)

  ※「動悸」:安静時脈拍数120回/分超の状態。

  例)脈が飛ぶ、脈が乱れる等。

 ②「呼吸困難」(無・有・著)

 ③「息切れ」(無・有・著)

 ④「胸痛」(無・有・著)

  例)急性冠症候群等。

 ⑤「咳」(無・有・著)

 ⑥「痰」(無・有・著)

 ⑦「失神」(無・有)

  例)急性冠症候群等。

(2)他覚所見(臨床症状)

 ①「チアノーゼ」(無・有・著)

 ②「浮腫」(無・有・著)

 ③「頸静脈怒張」(無・有)

 ④「ばち状指」(無・有)

 ⑤「尿量減少」(無・有)

 ⑥「器質的雑音」(無・有)及び「Levine度」

  ※「Levine度」:Levine分類(心雑音の強度分類)による強度。Ⅲ度以上の器質的雑音は考慮される。

 

【Levine分類(レバイン分類)】

心雑音の強度分類 心雑音の強度内容 振戦の触知
Levine Ⅰ度
(非常に弱い)
微弱で、注意深い聴診で聴こえる。 ×
Levine Ⅱ度
(弱い)
弱いが、聴診器を当てれば即座に聴こえる。 ×
Levine Ⅲ度
(中等度)
明瞭に聴こえる。振戦は触知できない。 ×
Levine Ⅳ度
(強い)
明瞭に聴こえる。振戦を触知できる。
Levine Ⅴ度
(非常に強い)
聴診器の端を胸壁に当てるだけで聴こえる。
Levine Ⅵ度
(遠隔雑音)
聴診器を胸壁に近づけるだけで聴こえる。

 ※「振戦の触知」:LevineⅣ度以上になると、心雑音による振動(スリル)が手で触っても分かる状態となる。

 

(3)NYHA心機能分類(第11欄3)

 ・NYHA(ニューヨーク心臓協会)による心機能分類(心不全の重症度)のうち、該当するものが考慮される。

 

【NYHA心機能分類(ニーハ分類)】

心機能分類
(重症度)
心不全の症状及び身体活動の制限の程度
NYHA Ⅰ度
(軽度)
・心疾患はあるが身体活動に制限はない。
・日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。
NYHA Ⅱ度
(軽度)
・軽度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。
・日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
NYHA Ⅲ度
(中等度)
・高度な身体活動の制限がある。安静時には無症状。
・日常的な身体活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
NYHA Ⅳ度
(重度)
・心疾患のためいかなる身体活動も制限される。
・心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する。わずかな労作でこれらの症状は増悪する。

 

2.検査所見(第11欄4)

(1)心電図所見

 ・各種心電図所見のあるものは、当該心電図写しと併せて考慮される。

 ①「安静時心電図」の有無

  ・安静時心電図がある場合、後述する主な10種類の異常検査所見の有無が考慮される(第11節2(7))。

  ・重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見は、異常検査所見「E」に区分される。

   ※「重症な」:頻度や程度が著明な場合と考える。

   ※「頻脈性」:安静時脈拍数100回以上/分。

    例)洞性頻脈、上室性頻拍、頻脈性心房細動・心房粗動、接合部頻拍、心室頻拍等。

   ※「徐脈性」:安静時脈拍数50回以下/分。

    例)房室ブロック、洞房ブロック、洞性徐脈等。

  ・なお、脈拍数≒心拍数≒心房拍数≒心室拍数。正常であれば全て一致するが、病態により必ずしも一致しない。

  ⅰ)「心室性期外収縮」の有無

   ※「心室性期外収縮(PVC:premature ventricular contraction)」:正常よりも心室が早く収縮するもの。

   ・心室性期外収縮「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

  ⅱ)「心房細動・粗動」の有無

   ・心房細動のみは認定対象外(第11節2(9)④(注2))。

   ・心房細動に心不全が合併したり、ペースメーカーを装着した場合には認定対象として考慮される(同前)。

   ・心房粗動も心房細動と同様に取り扱われると考える。加齢に伴い漸増する一般的性質は同じだからである。

   ・心房細動・粗動「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

   ※「心房細動(af:atrial fibrillation)」:心房で無秩序な興奮(心房拍数350回以上/分)が発生する。

    ・P波がみられず、基線の動揺波形(f波:350~600回/分)がみられる。RR間隔は不規則。

   ※「心房粗動(AF:atrial flutter)」:心房で無秩序な興奮(心房拍数250~350回/分)が発生する。

    ・正常P波がみられず、のこぎり状の規則的な粗動波(F波:250~350回/分)がみられる。

  ⅲ)「完全左脚ブロック」の有無

   ※「完全左脚ブロック(LBBB:Left complete bundle branch block)」:QRS幅が0.12秒以上のもの。

   ・完全左脚ブロック「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

   例)虚血性心疾患や心筋症を伴う完全左脚ブロックは、「重症」なものに該当するものと考えられる。

  ⅳ)「陳旧性心筋梗塞」の有無

   ※「陳旧性心筋梗塞(OMI:old myocardial infarction)」:心筋壊死から1か月以上経過した心筋線維化。

   ・陳旧性心筋梗塞「有」かつ「今日まで狭心症状を有するもの」は、異常検査所見「I」に区分される。

   ※「狭心症状」:胸痛や胸部圧迫感が著しい(頻発している)場合。

  ⅵ)「完全房室ブロック」の有無
   ※「完全房室ブロック」:心房の興奮が心室へ全く伝導しない状態(第Ⅲ度)。

   ・P波とQRS波が無関係にリズムを刻む(房室解離)。突然死する可能性が高い。

   ・完全房室ブロック「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

  ⅶ)「MobitzⅡ型房室ブロック」の有無

   ※「MobitzⅡ型房室ブロック」:心房の興奮が心室へ突然伝導しない場合がある状態(第Ⅱ度)。

   ・PR時間は徐々に延長せず常に一定であるが、突然QRS波が脱落する。

   ・MobitzⅡ型房室ブロック「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

  ⅷ)「0.2mV以上のST低下」の有無

   ※「ST」:STセグメント(QRS波の終り(J点)からT波の始めまでの直線状の部分)。ST部分ともいう。

   ※「ST低下」:基線上に一致するべきSTが、基線以下に低下した状態。

   ・ST低下の形態には、上行型、水平型、下行型、盆状型等がある。

   ・主に心筋虚血を疑う。冠動脈狭窄ではST低下(虚血)、冠動脈閉塞はST上昇(貫壁性虚血)がみられる。

   ・0.2mV以上のST低下「有」は、異常検査所見「A」に区分される。

  ⅸ)「深い陰性T波」の有無(mV値)

   ※「深い陰性T波」:0.5mV以上の陰性T波(正常は山型のT波が谷型のもの)。

   ・深い陰性T波「有」(aVR誘導を除く。)は、異常検査所見「A」に区分される。

   ※「aVR誘導を除く」: aVR誘導(右室誘導)の波形は、左室誘導の波形と高低が逆だからである。

 

【標準12誘導心電図】

誘導名 誘導方法 電極の装着部位と色 心臓を見る方向と部位 波形方向
I 双極肢誘導 左手首(+)【黄】
右手首(-)【赤】
前額面(垂直面)上の左肩から
左室高位側壁を見る。
双極肢誘導 左足首(+)【緑】
右手首(-)【赤】
前額面(垂直面)上の左下から
心尖部と左室下壁を見る。
双極肢誘導 左足首(+)【緑】
左手首(-)【黄】
前額面(垂直面)上のほぼ真下から
右室側面と左室下壁を見る。
aVR 単極肢誘導 右手首(+)【赤】 前額面(垂直面)上の右肩から
右房や右室の一部を見る。

(逆)
aVL 単極肢誘導 左手首(+)【黄】 前額面(垂直面)上の左肩から
左室高位側壁を見る。
aVF 単極肢誘導 左足首(+)【緑】 前額面(垂直面)上のほぼ真下から
左室下壁を見る。
V1 単極胸部誘導 第4肋間胸骨右縁
(+)【赤】
水平面上の主に右室側から
心室中隔を見る。
V2 単極胸部誘導 第4肋間胸骨左縁
(+)【黄】
水平面上の右室前壁と心室中隔側から
心室中隔を見る。
V3 単極胸部誘導 V2とV4の結合線の中点
(+)【緑】
水平面上の心室中隔と左室前壁側から
左室前壁を見る。
V4 単極胸部誘導 左鎖骨中線と第5肋間を
横切る水平線との交点
(+)【茶】
水平面上の左室前壁側から
左室前壁を見る。
V5 単極胸部誘導 V4の高さの水平線と
左前腋窩線との交点
(+)【黒】
水平面上の左室前壁と左室側壁側から
左室側壁を見る。
V6 単極胸部誘導 V4の高さの水平線と
左中腋窩線との交点
(+)【紫】
水平面上の左室側壁側から
左室側壁を見る。

 

  ⅹ)「その他」の安静時心電図所見

   例1)洞性頻脈:脈(波形)は正常で規則的だが速いもの(脈拍数:100回/分以上)。洞結節の異常を示す。    ・洞性頻脈で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

   例2)洞性徐脈:脈(波形)は正常で規則的だが遅いもの(脈拍数:50回/分以下)。洞結節の異常を示す。

    ・洞性徐脈で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

   例3)心房性期外収縮:正常よりも心房が早く収縮するもの。

    ・心房性期外収縮で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

   例4)発作性上室性頻拍(PSVT:Paroxysmal SupraVentricular Tachycardia)

    ・心拍数120~240回/分の規則的な頻拍。突然起こり、突然停止する。上室異常による。

    ※「上室」:心室より上側の組織。心房や房室接合部付近。右心房、洞結節、結節間路、房室結節等。

    ・発作性上室性頻拍で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

    例4-1)房室結節回帰性頻拍(AVNRT:atrioventricular nodal reentrant tachycardia)

    例4-2)房室回帰性頻拍(AVRT:atrioventricular reentrant tachycardia、WPW症候群)

    例4-3)洞結節回帰性頻拍(SANRT:sinoatrial nodal reentrant tachycardia)

    例4-4)心房頻拍(AT:atrial tachycardia)

   例5)心室頻拍:心室拍数100~200回/分。心室異常による期外収縮の頻発。

    ・心室頻拍で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

     例)トルサード・ド・ポアンツ(一過性心室細動):心室頻拍の特殊型。

    ・QT延長時に起こり易く、突然死を起す場合がある。

   例6)心室細動・粗動

    ・心室細動・粗動は、重症な頻脈性不整脈所見といえるため、異常検査所見「E」に区分される。

    ・心室細動は心室拍数300回/分以上、心室粗動は心室拍数250~300回/分となる心臓の痙攣状態。

    ・いずれも事実上の心停止状態のため、電気的除細動等の実施歴や重症を示す他の記載も併せて重視される。

 ② 負荷心電図の有無等

  ・負荷心電図がある場合、次の2つの事項が考慮される。

  ⅰ)陰性・疑陽性・陽性の別

  ⅱ)Mets(メッツ):Metabolic equivalentsの略。代謝当量(安静臥位時の代謝量を基準とした運動強度)。

   ・安静臥位時の代謝量、換言すれば、安静時の酸素摂取量(3.5ml/kg体重/分)を1Metsとする。

   ・安静時の何倍の酸素摂取量が要求される運動強度の身体活動(負荷)に耐え得る能力をもつのかをみる。

   例)普通に歩くことは3Mets相当、近所の散歩は2.5Mets相当の負荷がかかる(目安)。

   ・負荷心電図(6METs未満相当)等で明らかな心筋虚血所見がある場合、異常検査所見「B」に区分される。

 

【「Mets」と一般状態「区分」の対応関係】

・身体活動能力の指標「Mets」と一般状態区分表の「区分」とは、概ね次の表における対応関係がある。

身体活動能力 区分 一般状態
6METs 以上 ・無症状である。
・社会活動ができ、制限を受けることがない。
・発病前と同等にふるまえる。
4METs 以上6METs 未満 ・軽度の症状がある。
・肉体労働は制限を受ける。
・歩行、軽労働や座業(軽い家事、事務等)はできる。  
3METs 以上 4METs 未満 ・歩行や身の回りのことはできる。
・時に少し介助が必要なことがある。
・軽労働はできない。
・日中の50%以上は起居している。
2METs 以上 3METs 未満 ・身の回りのある程度のことはできる。
・しばしば介助が必要である。
・日中の50%以上は就床している。
・自力では屋外への外出等が殆どできない。
2METs 未満 ・身の回りのことはできない。
・常に介助を必要である。
・終日就床を強いられる。
・活動の範囲が概ねベッド周辺に限られる。

 

 ③ ホルター心電図の有無

  ・ホルター心電図がある場合、当該心電図の写し及び所見が考慮される。

  ※「ホルター心電図」:24時間機器を装着し日常生活において記録する心電図。所見では解析ソフトを用いる。

(2)胸部X線所見

 ①「心胸郭係数」(単位%)

  ・胸部X線上で心胸郭係数60%以上の場合、異常検査所見「C」に区分される。

 ②「肺静脈うっ血」の有無等(著しい程度の場合、その旨)

  ・肺静脈うっ血が「有」(明らかな所見)の場合、異常検査所見「C」に区分される。

   ※「肺静脈うっ血」:肺静脈内の血液量が増加し血流が滞っている状態。

  ・肺静脈うっ血が「著」(間質性肺水腫)の場合、異常検査所見「C」に区分される。

   ※「間質性肺水腫」:肺静脈うっ血が悪化し、血管外へ血液成分が漏出し間質に溜まった状態。

(3)動脈血ガス分析値(現症日の直近の結果)

 ①「動脈血酸素分圧」(単位Torr)

 ②「動脈血炭酸ガス分圧」(単位Torr)

(4)心カテーテル検査(現症日の直近の結果)

 ①「左室駆出率(EF:left ventricular ejection fraction)」(単位%)

  ※左室駆出率(EF)=(拡張末期容積-収縮末期容積)÷ 拡張末期容積 × 100

  →正常は50%~80%。40%以下のものは、異常検査所見「F」に区分される(第11節2(7))。

 ②「冠動脈れん縮誘発試験」の有無(陰性又は陽性の別)

 ③「左主幹部に50%以上の狭窄」の有無

  ・左主幹部に50%以上の狭窄が有るものは、異常検査所見「H」に区分される(第11節2(7))。

 ④「3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄」の有無

  ・3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄が有るものは、異常検査所見「H」に区分される(第11節2(7))。

  ※「3本の主要冠動脈」:右冠動脈並びに左冠動脈の前下行枝及び回旋枝。

 ⑤「心カテーテル検査所見」

(5)心エコー検査(現症日の直近の結果)

 ①「左室拡張期径」及び「左室収縮期径」(いずれも単位mm)

  ・中等度以上の左室拡大(拡張末期・収縮末期の左室内径の拡大状態)は、異常検査所見「D」に区分される。

   ※「拡張末期」:僧帽弁及び三尖弁は開いており、大動脈弁及び肺動脈弁は閉じているとき。

   ※「収縮末期」:僧帽弁及び三尖弁は閉じており、大動脈弁及び肺動脈弁は開いているとき。

 ②「左室駆出率(EF値)」(単位%)

 ③「心エコー検査所見」

  例1)左室肥大:左室後壁厚の肥厚状態。

   ・中等度以上の左室肥大は、異常検査所見「D」に区分される。

  例2)弁膜症(弁疾患)

   ・弁膜症(心臓の弁の狭窄又は閉鎖不全)は、異常検査所見「D」に区分される。

    ※「心臓の弁」:①房室弁(僧帽弁と三尖弁)、⓶動脈弁(大動脈弁と肺動脈弁)がある。

   例2-1)大動脈弁狭窄症

   例2-2)大動脈弁閉鎖不全症

   例2-3)僧帽弁閉鎖不全症

   例2-4)三尖弁閉鎖不全症

  例3)収縮能の低下(収縮機能不全):左室収縮性が低下した心不全。

   ・収縮能の低下は、異常検査所見「D」に区分される。

  例4)拡張能の制限(拡張機能不全):左室収縮性が保持された心不全。

   ・拡張能の制限は、異常検査所見「D」に区分される。

  例5)推定肺動脈圧

(6)血液検査(現症日の直近の結果)

 ・循環器疾患の血液検査では、次のいずれか一つの検査値を得れば足り、それが考慮される。

 ①「BNP値(脳性ナトリウム利尿ペプチド)」(単位pg/mL)

  ・BNP値が200pg/mL相当を超えるものは、異常検査所見「G」に区分される。

 ②「NT-proBNP値(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)」(単位pg/mL)

 

【BNP値とNT-proBNP値の取扱いの差異(閾値)の考察】

BNP値でいう「200pg/mL相当」(異常検査所見「G」に区分されるもの)とは、NT-proBNP値でいうどの程度の数値(閾値)なのか、認定基準では明らかでないため問題となる。BNP値の症例データは豊富だがNT-proBNP値では少ないこと(個体差や測定技術面によるばらつきや誤差等)に起因するものと考えられる。

日本心不全学会によれば「BNP>200pg/mL」は「NT-proBNP>900pg/mL」と同程度(「治療対象となる心不全の可能性が高いので精査あるいは専門医へ紹介」が必要な程度)と判断しているため、「NT-proBNP>900pg/mL」であれば、異常検査所見「G」に区分されるものに匹敵するとみてよいであろう。

 

【BNP値とNT-proBNP値の用語の解説】

・いずれの数値も左室機能不全の重症度を心筋細胞が分泌するホルモンの血中濃度から判定する指標である。

・いずれも重症になるほど数値は高くなる。高値の場合、心不全や心筋梗塞のほか、高血圧、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症等が疑われる。

・加齢、腎機能低下、呼吸器疾患等により高くなる影響を受けていないか(過大評価)、また、脱水状態、利尿薬、肥満等により低くなる影響を受けていないか(過小評価)に留意する必要がある。

※「proBNP」:BNPの前駆体。

 ・主に左心室の心筋細胞から分泌される。

 ・108個のアミノ酸[1-108]で構成される蛋白質ホルモン。

 ・心筋細胞への負荷が大きくなるほどproBNPの合成が亢進する(分泌量が増える)。

 ・生理活性なし。

 ・proBNPが蛋白分解酵素によりNT-proBNP[1-76]とBNP[77-108]に切断され、

  それぞれ循環血液中に放出される。

※「NT-proBNP」:proBNP由来の蛋白質ホルモンの血中濃度。

 ・主に左心室の心筋細胞から産生される。

 ・N端から76個のアミノ酸[1-76]から成る。

 ・生理活性なし。

 ・血中半減期は約120分(血中安定性はBNPに比べて高い)。

※「BNP」:proBNP由来のペプチドホルモンの血中濃度。

 ・主に左心室の心筋細胞から産生される。

 ・32個のアミノ酸[77-108]から成る。

 ・生理活性(血管拡張作用やNa利尿作用等)がある。

 ・血中半減期は約20分(血中安定性はNT-proBNPに比べて低い)。

 

3.その他の所見(第11欄5)

 <自覚症状(その他)>

  例1)強い眩暈(めまい):意識が遠くなりふらつき立っていられない等。

  例2)冷汗:【連動】急性冠症候群等。

 <他覚所見(その他)>

  例3)肝腫大:肝容積の異常な増大。肋弓下に肝下縁を2cm以上触知する場合等。【連動】右心不全。

 <検査所見(その他)>

  例4)冠動脈造影所見:病変枝数(1枝病変、多枝病変)、複雑病変(偏心性病変、壁不整病変)等。

 

4.一般状態(一般状態区分表)(第11欄2)

 ・次の一般状態区分表の区分は、循環器疾患に共通する必須の考慮要素である。

 

【一般状態区分表】

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

5.治療及び病状の経過(第9欄)

 ・現在までの治療内容及び病状の経過等が考慮される(第9欄)。

(1)現在までの治療の内容

 例)降圧療法の内容(薬剤名、投与法、降圧目標レベル等)。

(2)治療の期間

(3)病状の経過

(4)診療回数

 ・現症日前1年間における診療回数が考慮される。

 ・入院した場合、入院日数1日は診療回数1回として計算する。

  例)高血圧緊急症を発症し、ICU等で入院治療を行った場合。

(5)手術歴(手術名及び手術年月日)

 ※「手術名」:冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術等。

(6)その他参考となる事項

 

6.現症時の具体的な日常生活活動能力及び労働能力(第13欄)

 ・現症時の具体的な日常生活活動(ADL)能力及び労働能力は、必ず把握され、考慮される(同欄朱書)。

 ・客観的所見に基づくADL能力及び労働能力は、十分考慮される。

 

7.予後(第14欄)

 ・予後は、必須記載事項として考慮される(同欄朱書)。

  例1)不良:臓器障害(心不全、高血圧脳症、脳出血、腎不全等)の進行の見通し。

  例2)術後予後:冠動脈バイパス術等を施行した場合。

  例3)生命予後:余命記載があるもの。

  例4)不詳:予後が診断時に判断できない場合。

 

8.備考(第18欄)

 ・障害認定時期や等級判定に影響を及ぼしうる特記事項の記入が要求される場合がある。

 

Ⅱ.「高血圧症による障害」に係る診断書の記載における考慮要素(高血圧症に係る特定事項)

 

1.高血圧症(第12欄7)

(1)高血圧症の分類(及び病名):本態性高血圧症又は二次性高血圧症の別、及び病名。

 ①「本態性高血圧症」:原因疾患が特定できない高血圧の分類の一つ。9割程度がこれに該当する。

 ⓶「二次性高血圧症」:原因疾患が特定できない高血圧の分類の一つ。1割程度がこれに該当する。

  例1)腎性高血圧:腎機能の異常によるもの。

   例1-1)腎実質性高血圧:腎炎や糖尿病によるもの。

   例1-2)腎血管性高血圧:腎臓の血管異常(線維筋性異型性、動脈硬化)によるもの。

   例2)内分泌性高血圧:ホルモンの異常に起因するもの。

    例2-1)副腎皮質性高血圧:原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫等によるもの。

    例2-2)甲状腺性高血圧:バセドウ氏病、甲状腺機能低下症等によるもの。

    例2-3)副甲状腺性高血圧:副甲状腺機能亢進症等によるもの。

    例2-4)下垂体性高血圧:クッシング病、末端肥大症等によるもの。

   例3) 大血管性高血圧:大動脈炎、大動脈縮窄症等によるもの。

 ③「病名」:次のようなものがある(日本高血圧学会治療ガイドライン2014参考)。

  <高血圧緊急症の場合>

   例1)高血圧緊急症(乳頭浮腫を伴う加速型・悪性高血圧の場合)

    ※「加速型-悪性高血圧」:従前の加速型高血圧と悪性高血圧を一つに纏めた分類名であり、病名ではない。

     ・乳頭浮腫を伴う等の重症の場合は緊急症、重症でない場合は切迫症と位置付けられる。

    ※「加速型高血圧症」:次の2つの全てに該当するもの(参考)。

     ⅰ)拡張期血圧が120~130mmHg以上である。

     ⅱ)眼底所見でKW(Kieth-Wagener)Ⅲ度(出血・軟性白斑)以上のものである。

    ※「悪性高血圧(高血圧緊急症)」:次のⅰ又はⅱに該当し、かつⅲに該当するもの(診断基準)。

     ⅰ)定型的悪性高血圧:次の4つの全てに該当するもの。

      a)治療前の拡張期血圧が常に130mmHg以上である。

      b)眼底所見がKW(Kieth-Wagener)Ⅳ度で、乳頭浮腫及び網膜出血を示す。

      c)腎機能障害を来し、腎不全(血清クレアチニン5.0mg/dL以上)に至っている。

      d)全身症状の急激な悪化を示し、特に脳症状や心症状を伴う。

       ※「脳症状」:運動失調、知覚障害、頭痛、眩暈(めまい)、悪心等。

       ※「心症状」:呼吸困難、胸痛、不整脈等。

     ⅱ)非定型的悪性高血圧:次の3つのいずれか1つに該当するもの。

      a)拡張期血圧が120mmHg以上、130mmHg未満で、前記ⅰのa、c、dの全てに該当する。

      b)KWⅢ度の高血圧性網膜症で、前記1のa、c、dの全てに該当する。

      c)腎機能障害(血清クレアチニン3.0mg/dL以上)はあるが腎不全には至っておらず、かつ、

       前記ⅰのa、b、dの全てに該当する。

     ⅲ)8週間以上の強力な降圧治療後も次の3つの全てに該当するもの。

      a)拡張期血圧が100mmHg以上である。

      b)KWⅢ度以上の高血圧性網膜症で、軟性白斑又は網膜出血を示す。

      c)腎機能障害(血清クレアチニン3.0mg/dL以上)を示す。

   例2)高血圧性脳症

   例3)アテローム血栓性脳梗塞(急性の脳血管障害を伴う重症高血圧の場合)

   例4)脳出血(急性の脳血管障害を伴う重症高血圧の場合)

   例5)くも膜下出血(急性の脳血管障害を伴う重症高血圧の場合)

   例6)頭部外傷(急性の脳血管障害を伴う重症高血圧の場合)

   例7)急性大動脈解離(急性の循環器機能障害を伴う重症高血圧の場合)

   例8)急性左心不全(急性の循環器機能障害を伴う重症高血圧の場合)

    ※「急性左心不全」:急性肺水腫による呼吸困難等を伴う場合がある。

   例9)急性心筋梗塞(急性の心機能障害を伴う重症高血圧の場合)

    ※「急性心筋梗塞」:血栓閉塞から心筋壊死に至ったもの。

   例10)急性冠症候群(急性の心機能障害を伴う重症高血圧の場合)

    ※「急性冠症候群」:急性心筋梗塞及び不安定狭心症。

   例10)急性(進行性)腎不全(急性の腎機能障害を伴う重症高血圧の場合)

    ※「急性腎不全」:急性糸球体腎炎等。

(2)検査成績

 ① 血圧検査(3回分):血圧測定年月日、最大血圧、最低血圧、降圧剤の服用の有無(及び種類数)

 ② 尿検査:尿蛋白の有無の評価(−・±・+・++)。

(3)一過性脳虚血発作の既往歴

 ① 一過性脳虚血発作の既往の有無(無・有)

  ※「一過性脳虚血発作」:局所脳虚血の症状が出現して24時間以内に消失する一過性発作。

 ⓶ 一過性脳虚血発作の既往「有」の場合:「1年以内」か「1年以上前」かの別、及び発生「年月」。

  →「1年以内」の場合、2級が検討されうる。

  →「1年以上前」の場合、3級が検討されうる。

(4)眼底検査所見、検査方法及び所見日

 ・眼底検査所見の分類(主要な二種類その他)、その眼底検査方法及び所見日が考慮される。

 ① 眼底検査所見の分類

  ⅰ)「KW」:Keith-Wagener分類(キースワーグナー分類)による眼底検査所見の単線型評価(記号)。

 

【Keith-Wagener分類(キースワーグナー分類)】

眼底検査所見の分類 記号 眼底検査所見
Keith-Wagener 0群 KW0 ・異常所見なし(正常)。
Keith-Wagener Ⅰ群 KWⅠ ・細動脈の狭細化(狭窄)は、軽度である。
・細動脈の硬化は、軽度である。
Keith-Wagener Ⅱa群 KWⅡa ・細動脈の狭細化(狭窄)は、著明(Ⅰ群以上)である。
・細動脈の硬化は、明らか(Ⅰ群以上)である。
Keith-Wagener Ⅱb群 KWⅡb ・上記所見が認められる。
・眼底出血、硬性白斑も認められる。
Keith-Wagener Ⅲ群 KWⅢ ・細動脈の狭細化(狭窄)は、高度である。
・細動脈の硬化は、著明(Ⅱ群以上)である。
・眼底出血、軟性白斑、網膜浮腫も認められる。
Keith-Wagener Ⅳ群 KWⅣ ・乳頭浮腫も認められる。

 ※「硬性白斑」:星状斑。網膜浮腫による血管透過性の亢進や出血による漏出成分が沈着した星状の白い斑点。

 ※「軟性白斑」:綿花状白斑。網膜の虚血状態を示す綿花状の白い斑点。

 ※「乳頭浮腫」:視神経乳頭が腫れる病態。

 

  ⅱ)「Scheie」:Scheie分類(シェイエ分類)による眼底検査所見の複線型評価(記号)。

   ・高血圧性変化(H)及び動脈硬化性変化(S)の眼底変化の所見について、両評価(記号)が考慮される。

   <付与される記号の例>

    例1)上記両変化のいずれも異常所見がない場合→「H0S0」。

    例2)上記両変化のいずれも第1度の場合→「H1S1」

 

【眼底検査所見(H)のScheie分類(シェイエ分類)】

眼底検査所見(H)の分類 記号 高血圧性変化(H:hypertensive changes)
Scheie(H)第0度 H0 ・異常所見なし(正常)。
Scheie(H)第1度 H1 ・網膜細動脈の狭細化(狭窄)は、軽度である。
Scheie(H)第2度 H2 ・網膜細動脈の狭細化(狭窄)は、著明である。
・口径不同は、著明である。
Scheie(H)第3度 H3 ・網膜細動脈の狭細化は、高度である。
・口径不同は、高度である。
・網膜出血や白斑も認められる。
Scheie(H)第4度 H4 ・上記H3の所見が認められる。
・乳頭浮腫も認められる。

 ※「口径不同」:1本の動脈に太い部分と細い部分ができる現象。口径不整ともいう。

 

【眼底検査所見(S)のScheie分類(シェイエ分類)】

眼底検査所見(S)の分類 記号 動脈硬化性変化(S:sclerotic changes)
Scheie(S)第0度 S0 ・異常所見なし(正常)。
Scheie(S)第1度 S1 ・網膜細動脈壁反射亢進は、軽度である。
・網膜細動静脈交叉現象は、軽度である。
Scheie(S)第2度 S2 ・網膜細動脈壁反射亢進は、著明である。
・網膜細動静脈交叉現象は、著明である。
Scheie(S)第3度 S3 ・銅線動脈が認められる。
・網膜細動静脈交叉現象は、高度である。
Scheie(S)第4度 S4 ・銀線動脈が認められる。
・網膜細動静脈交叉現象は、更に高度である。

 ※「網膜細動脈壁反射亢進」:動脈硬化により動脈壁が肥厚し動脈の反射が強くなること。

 ※「網膜細動静脈交叉現象」:動脈硬化により動脈壁が肥厚し動脈と静脈の交叉部分で静脈が見づらくなる現象。

 ※「銅線動脈」:第2度よりも更に反射が強くなり、色調と輝きも変化して、血管が銅線のように見える状態。

 ※「銀線動脈」:血管壁が濁って不透明になり血柱が隠れるため、血管が銀色のように見える状態。

 

  ⅲ)「その他」の眼底検査所見の分類

   ◇糖尿病性網膜症の重症度分類

    例1)改変Davis分類

    例2)新福田分類

    例3)ETDRS分類

    例4)国際重症度分類

 ② 眼底検査方法

  例1)直像検査法:瞳孔に光を入れて、眼底(網膜の中心部のみ)を検眼鏡で平面的に観察するもの。

  例2)倒像検査法:瞳孔に光を入れて、網膜(全体)像を凹面鏡で平面的に観察するもの。

  例3)細隙灯顕微鏡検査法:瞳孔にスリット光を入れて、細隙灯顕微鏡で平面的に観察するもの。

  例4)眼底三次元画像解析検査法:網膜断面像情報から三次元画像を再現する解析機器で立体的に観察するもの。

   ※「解析機器」:共焦点走査レーザー眼底鏡、共焦点走査レーザーポラリメーター、光干渉断層計(OCT)。

 ③ 眼底検査所見日:現症日とは通常一致しない。

(5)「その他の合併症」の有無等

 ・その他の合併症の有無及び病名が考慮される。

  例1)大動脈解離

   →大動脈疾患の記載欄(第12欄4(1))における大動脈解離に係る詳細も考慮される。

  例2)大動脈瘤

   →大動脈疾患の記載欄(第12欄4(2))における大動脈瘤に係る詳細も考慮される。

  例3)末梢動脈閉塞

  例4)悪性高血圧脳症

  例5)悪性腎硬化症

(6)「血清クレアチニン濃度」(単位mg/dL)

  例1)8.0以上の場合:腎機能障害(高度異常、腎不全)。

  例2)5.0以上、8.0未満の場合:腎機能障害(中等度異常、腎不全)。

  例3)3.0以上、5.0未満の場合:腎機能障害(軽度異常)。

 

 

【1級】(「高血圧症による障害」の障害の程度)

<1級相当の高血圧症による障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、高血圧症の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第17節1)

 

 <悪性高血圧症>

 例1)次の4つの全てに該当するもの(第17節2(5)参考)。

  ① 高い拡張期性高血圧(通常最小血圧が120mmHg以上)である。

  ⓶ 眼底所見でKW(Kieth-Wagener)Ⅲ度以上のものである。

   →定型的悪性高血圧で要求されるⅣ度でなくともよい。

  ③ 腎機能障害が急激に進行し、放置すれば腎不全に至る。

   →血清クレアチニンが3.0mg/dL以上(軽度異常)で、放置すれば5.0mg/dL以上(中等度異常)になる虞有。

  ④ 全身症状の急激な悪化を示し、血圧、腎障害の増悪とともに、脳症状や心不全を多く伴う。

   ※「脳症状」:運動失調、知覚障害、頭痛、めまい、悪心等。

   ※「心不全」:左心不全(呼吸困難、全身倦怠感、頭痛等)、右心不全(心臓性浮腫、肝腫大等)。

 

 <高血圧症+大動脈解離>

 例2)次の3つの全てに該当するもの(第17節2(8)参考)。

  ① 高血圧症+大動脈解離

  ⓶ 一般状態区分が「オ」に該当する。

  ③ 前記「オ」と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 

 <高血圧症+大動脈瘤>

 例3)次の3つの全てに該当するもの(第17節2(8)参考)。

  ① 高血圧症+大動脈瘤

  ⓶ 一般状態区分が「オ」に該当する。

  ③ 前記「オ」と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 

【2級】(「高血圧症による障害」の障害の程度)

<2級相当の高血圧症による障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、高血圧症の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第17節1)

 

 <1年以内の一過性虚血発作等>

 例1)次の症状及び所見等があるもの(第17節2(6))。

 ・1年以内の一過性虚血発作、動脈硬化の所見の他、出血、白斑を伴う高血圧性網膜症を有するもの。

  ※「一過性虚血発作」:脳梗塞の前駆症状(半身麻痺、意識消失、記憶障害、発話困難、視力障害等)。

 

 <高血圧症+大動脈解離>

 例2)次の3つの全てに該当するもの(第17節2(8)参考)。

  ① 高血圧症+大動脈解離

  ⓶ 一般状態区分が「エ」又は「ウ」に該当する。

  ③ 前記「エ」又は「ウ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 

 <高血圧症+大動脈瘤>

 例3)次の3つの全てに該当するもの(第17節2(8)参考)。

  ① 高血圧症+大動脈瘤

  ⓶ 一般状態区分が「エ」又は「ウ」に該当する。

  ③ 前記「エ」又は「ウ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 

 <高血圧症+動脈硬化性末梢動脈閉塞症>

 例4)高血圧症と動脈硬化性末梢動脈閉塞症により、運動障害を生じているもの(第17節(9))。

  ※「運動障害」:例)重症下肢虚血により一下肢を足関節以上で切断したもの(第7節第2の2(2)ア)。

  ※「足関節」:横足根関節(ショパール関節)。

 

【3級】(「高血圧症による障害」の障害の程度)

<3級相当の高血圧症による障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第17節1)

 

 <1年以上前の一過性虚血発作等>

 例1)次の①に該当し、かつ、⓶又は③に該当するもの(第17節2(7))。

  ① 頭痛、めまい、耳鳴、手足の痺れ等の自覚症状がある。

  ⓶ 1年以上前に一過性虚血発作(脳梗塞の前駆症状)が現れたことがある。

  ③ 眼底に著明な動脈硬化の所見が認められる。

   →眼底所見がKW(Keith-Wagener)Ⅱ度相当のものと考える。

 

 例2)高血圧症+大動脈解離(第17節2(8))。

 

 例3)高血圧症+大動脈瘤(第17節2(8))。