障害状態要件(悪性新生物による障害)

16.「悪性新生物による障害」の障害状態要件

※上記画像と本文の内容とは直接の関係はありません。

 

【目次】

16.「悪性新生物による障害」の障害状態要件

 

【注1】以下、根拠条文等について、次のように略記する場合があります。

・「節」は「障害認定基準」、「欄」は「診断書」を指すものとします。

 例1)「認定基準第3第1章第16節」→「第16節」

 例2)「血液・造血器・その他の障害用」診断書(様式120号の7)第13欄→「第13欄」

  ※癌の障害の診断書は、障害及びその原因疾患を最も的確に表わす様式を用います(様式120号の1~7)。

  ※癌の障害(全身衰弱等)の場合、「その他の障害用」(様式120号の7)の診断書を用います。

  ※複数の障害が併存する重複障害で請求する場合、様式の異なる複数の診断書を用いる場合があります。

  →診断書の様式が異なる場合、同種の記載欄の番号が本頁記載のものとは異なる場合があります。

【注2】本頁の例示は、認定基準の例示及び公開情報から推察し構築したものも含む場合があります。

 ※「公開情報」:障害年金の認定に関する専門家会合の議事録等。

 

16.「悪性新生物による障害」の障害状態要件

■障害の原因となった請求傷病(悪性新生物)による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第16節1)。

 

※「悪性新生物」:悪性腫瘍(固形癌)。全身の殆どの臓器に発生する。ゆえに症状も様々、障害も様々。

 ・請求人は、悪性新生物の区分に従い、現症時の障害の状態を最も的確に表す様式の診断書を提出すべきである。

 ・悪性新生物は、発生部位による疾患名が多いが、原発性か転移性(相当因果関係があるもの)かに留意する。

 ※「固形癌」:上皮細胞癌(肺癌、大腸癌等)と非上皮細胞癌(骨肉腫、横紋筋肉腫等)に大別される。

  →固形癌の発生部位が障害部位と一致するか否かを問わず、当該障害の状態を最も的確に表わす診断書を用いる。

  →尚、血液・造血器疾患(①赤血球系・造血不全疾患、②血栓・止血疾患、③白血球系・造血器腫瘍疾患)の場合、「血液・造血器疾患による障害」の障害状態要件参照。

 ※「原発性」:例)原発性肝癌、原発性肺癌。

 ※「転移性」:例)転移性肝癌(大腸癌肝転移)、転移性乳癌(乳癌骨転移)、転移性肺癌(肺癌リンパ節転移)。

  →転移性悪性新生物であっても転移であることが確認できない場合、相当因果関係が否認される虞がある。

  →原発巣と組織上一致する又は転移であることが確認できる転移性悪性新生物には、相当因果関係が是認される。

※「悪性新生物の区分」:悪性新生物は、次の3つに区分される(第16節2(3))。

(1)癌性局所障害:悪性新生物(原発巣・転移巣)自体によって生じる局所の障害(同ア)。

  ※「局所の障害」:原発巣又は(同一臓器内の)転移巣による癌性機能障害を指すと考える。

(2)癌性全身衰弱・機能障害:悪性新生物(原発巣・転移巣)自体による全身の衰弱又は機能の障害(同イ)。

  ※「機能の障害」:原発巣又は(複数臓器に跨る)転移巣による癌性機能障害を指すと考える。

(3)医原性全身衰弱・機能障害:悪性新生物に対する治療効果として起こる全身衰弱又は機能の障害(同ウ)。

  ※「機能の障害」:原発巣又は(複数臓器に跨る)転移巣への治療効果による医原性機能障害を指すと考える。

  ※「治療効果」:術後障害(術後後遺症)、抗癌剤投与や放射線治療の副作用、合併症等を指すと考える。

※「悪性新生物の発生部位による疾患名」:主なものは次の通り。

 ・尚、診断書の様式は、原発巣の場合の候補例である。

  →転移巣(乳癌骨転移等)の場合、「肢体の障害用」の診断書(様式120号の3)も提出可能と考える。

  →「肢体広域機能障害」「神経系統の障害」等の障害状態要件参照。

 ・尚、血液の癌(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等)の場合、血液・造血器疾患として取り扱われる。

  →「血液・造血器その他の障害」の診断書(様式120号の7)参照。

  →「血液・造血器疾患による障害」の障害状態要件参照。

 例1)舌癌、食道癌、咽頭癌、喉頭癌、甲状腺癌。

  →「聴覚、鼻腔機能、平衡機能、そしゃく・嚥下機能、言語機能の障害用」の診断書(様式120号の2)参照。

  →「悪性新生物による障害」及び「咀嚼・嚥下機能障害」又は「音声・言語機能障害」の障害状態要件参照。

 例2)胃癌、大腸癌(結腸癌、直腸S状部結腸癌、直腸癌)、胆のう癌、胆道癌、膵癌。

  →「血液・造血器その他の障害」の診断書(様式120号の7)参照。

  →「悪性新生物による障害」の障害状態要件参照。

 例3)腎癌。

  →「腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害用」の診断書(様式120号の6-(2))参照。

  →「悪性新生物による障害」及び「腎機能障害」の障害状態要件参照。

 例4)肝癌、肝内胆管癌。

  →「腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害用」の診断書(様式120号の6-(2))参照。

  →「悪性新生物による障害」及び「肝機能障害」の障害状態要件参照。

 例5)気管癌、気管支癌、肺癌。

  →「呼吸器疾患の障害用」の診断書(様式120号の5)参照。

  →「悪性新生物による障害」及び「呼吸器機能障害」の障害状態要件参照。

 例6)乳癌、子宮癌、卵巣癌。

  →「血液・造血器その他の障害」の診断書(様式120号の7)参照。

  →「悪性新生物による障害」の障害状態要件参照。

 例7)前立腺癌。

  →「血液・造血器その他の障害」の診断書(様式120号の7)参照。

  →「悪性新生物による障害」の障害状態要件参照。

 

●「悪性新生物による障害」の障害状態要件は、検査成績等を考慮して総合的に判断される(第16節2(7))。

 

1.現症時の症状(様式120号の7の場合:第15欄1)

 ・悪性新生物(原発巣・転移巣)による症状のほか、その治療効果による症状も考慮される。

(1)自覚症状

 ・倦怠や衰弱の有無、程度等が考慮される(第16節(5))。

(2)他覚所見

 ・各臓器の機能障害を示す所見等が考慮される。

 

2.検査成績(第120号の7の場合:第15欄2)

 ・悪性新生物の診断に係る組織所見とその悪性度が考慮される(第16節2(7))。

(1)一般検査:血液・生化学検査等の検査成績から機能障害の有無、程度等が考慮される(同(1))。

(2)特殊検査:悪性新生物の画像診断等の検査成績、転移の有無が考慮される(同(2))。

 例1)組織診断検査

 例2)腫瘍マーカー検査

 例3)超音波検査

 例4)X線CT検査

 例5)MRI検査

 例6)血管造影検査

 例7)内視鏡検査

 

3.一般状態(一般状態区分表)(様式120号の7の場合:第12欄)

 ・次の一般状態区分表の区分は、等級判定における必須の考慮要素である。

 

【一般状態区分表】

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

4.治療及び病状の経過(様式120号の7の場合:第9欄)

 ・現在までの治療の内容及び病状の経過、治療効果等が考慮される(第9欄)。

(1)現在までの治療の内容

 例1)外科手術の内容:切除術を行った部位等。

 例2)化学療法の内容:抗癌剤の薬剤名、用量等。

 例3)放射線治療の内容:放射線の種類、照射する部位、照射回数等。

(2)治療の期間

(3)病状の経過と治療効果

 ・治療効果(副作用等)は、等級判定の考慮要素として重視される(第16節2(3)(6)(7)参考)。

 例1)術後障害等:検査値の推移、術前の症状の消長、術後障害の有無、程度、合併症等。

 例2)抗癌剤投与の副作用等:検査値の推移、脱毛、嘔吐、吐血、下痢、倦怠、衰弱の有無、程度、合併症等。

 例3)放射線治療の副作用等:検査値の推移、脱毛、嘔吐、吐血、下痢、倦怠、衰弱の有無、程度、合併症等。

(4)診療回数

 ・現症日前1年間における診療回数が考慮される。

 ・入院した場合、入院日数1日は診療回数1回として計算する。

(5)手術歴(手術名及び手術年月日)

 ・切除術名及び手術年月日は、悪性新生物に対する治療効果による障害の原因となりうるため、考慮される。

(6)その他参考となる事項

 

5.現在の症状(様式120号の7の場合:第10欄)

 ・現在の症状等は、現症時の障害の状態を認定するうえで、第9欄と同等以上に重視される考慮要素と考える。

(1)現在の症状

 <固形癌の治療効果(医原性障害)の場合>

 例1)術後障害(術後後遺症等)。

 例2)抗癌剤投与の副作用、合併症等。

 例3)放射線治療の副作用、合併症等。

(2)その他参考となる事項

 ・現在の病状のステージの記載がある場合、等級判定の考慮要素として重視されると考える。

 

6.現症時の具体的な日常生活活動能力及び労働能力(様式120号の7の場合:第16欄)

 ・現症時の具体的な日常生活活動(ADL)能力及び労働能力は、必ず把握され、考慮される(同欄朱書)。

 ・客観的所見に基づくADL能力及び労働能力は、十分考慮される。

 

7.予後(様式120号の7の場合:第17欄)

 ・予後は、必須記載事項として考慮される(同欄朱書)。

  例1)不良:病状の進行の見通し。

  例2)術後予後:切除術等を施行した場合。

  例3)生命予後:余命記載があるもの。

  例4)不詳:予後が診断時に判断できない場合。

 

8.備考(第18欄)

 ・障害認定時期や等級判定に影響を及ぼしうる特記事項の記入が要求される場合がある。

 

 

【1級】(「悪性新生物による障害」の障害の程度)

<1級相当の悪性新生物による障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、悪性新生物の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第16節1)

 

 <癌性重度衰弱・機能障害>

 例1)次の2つ全てに該当するもの(第16節1、2(3)ア・イ、(4)(5))。

  ① 悪性新生物(原発巣、転移巣を含む。)自体に起因する「著しい衰弱又は障害」がある。

   ※「障害」:身体の機能の(局所又は全身の重度)障害。

   →1級相当の具体的な障害の内容は、障害の種類に応じた各障害状態要件参照。

  ⓶ 前記①のため、一般状態区分が「オ」に該当する。

 

 <医原性重度衰弱・機能障害>

 例2)次の2つ全てに該当するもの(第16節1、2(3)ウ、(4)(5))。

  ① 悪性新生物(原発巣、転移巣を含む。)に対する治療効果に起因する「著しい衰弱又は障害」がある。

   ※「障害」:身体の機能の(局所又は全身の重度)障害。

   →1級相当の具体的な障害の内容は、障害の種類に応じた各障害状態要件参照。

  ⓶ 前記①のため、一般状態区分が「オ」に該当する。  

 

【2級】(「悪性新生物による障害」の障害の程度)

<2級相当の悪性新生物による障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、悪性新生物の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。 

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第16節1)

 

 <癌性中等度衰弱・機能障害>

 例1)次の2つ全てに該当するもの(第16節1、2(3)ア・イ、(4)(5))。

  ① 悪性新生物(原発巣、転移巣を含む。)自体に起因する「衰弱又は障害」がある。

   ※「障害」:身体の機能の(局所又は全身の中等度)障害。

   →2級相当の具体的な障害の内容は、障害の種類に応じた各障害状態要件参照。

  ⓶ 前記①のため、一般状態区分が「エ」又は「ウ」に該当する。

 

 <医原性中等度全身衰弱・機能障害>

 例2)次の2つ全てに該当するもの(第16節1、2(3)ウ、(4)(5))。

  ① 悪性新生物(原発巣、転移巣を含む。)に対する治療効果に起因する「衰弱又は障害」がある。

   ※「障害」:身体の機能の(局所又は全身の中等度)障害。

   →2級相当の具体的な障害の内容は、障害の種類に応じた各障害状態要件参照。

  ⓶ 前記①のため、一般状態区分が「エ」又は「ウ」に該当する。

 

【3級】(「悪性新生物による障害」の障害の程度)

<3級相当の悪性新生物による障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第16節1)

 

 <癌性軽度全身衰弱(重度全身倦怠)>

 例1)次の2つ全てに該当するもの(第16節2(3)イ、(4)(5))。

  ① 悪性新生物(原発巣、転移巣を含む。)自体に起因する「著しい全身倦怠」がある。

  ⓶ 前記①のため、一般状態区分が「ウ」又は「イ」に該当する。

 

 <医原性軽度全身衰弱(重度全身倦怠)>

 例2)次の2つ全てに該当するもの(第16節2(3)ウ、(4)(5))。

  ① 悪性新生物(原発巣、転移巣を含む。)に対する治療効果に起因する「著しい全身倦怠」がある。

  ⓶ 前記①のため、一般状態区分が「ウ」又は「イ」に該当する。

 

 <悪性新生物に随伴する疼痛(癌性疼痛・医原性疼痛)>

 例3)次の2つ全てに該当するもの(第16節2(3)ア・イ・ウ、(4)~(7)、第9節2(3)ア)。

  ① 悪性新生物に随伴する疼痛が(局所的又は全身的に)生じている。

   ※「随伴する」:悪性新生物(原発巣・転移巣)自体又は悪性新生物に対する治療効果に起因して伴うもの。

   ※「疼痛」:悪性新生物に随伴する限り、激痛でなくともよいが、これのみでの上位等級の認定はない。

   ※「局所的又は全身的に」:全身疼痛であっても、これのみでの上位等級の認定はない。

   ※「生じている」:長期間持続したり、発作として断続的に生じている場合。一過性のものは除く趣旨。

  ⓶ 軽易な労働以外の労働に常に支障がある。

   ※「軽易な労働以外の労働」:例)肉体労働(一般状態区分「イ」)。