障害状態要件(代謝障害)

15.「代謝障害(糖尿病等)」の障害状態要件

※上記画像と本文の内容とは直接の関係はありません。

 

【目次】

15.代謝疾患(糖尿病等)による「代謝障害」の障害状態要件

 

【注1】以下、根拠条文等について、次のように略記する場合があります。

・「節」は「障害認定基準」、「欄」は「診断書」を指すものとします。

 例1)「認定基準第3第1章第15節」→「第15節」

 例2)「腎疾患・肝疾患、糖尿病の障害用」診断書(様式120号の6-(2))第14欄→「第14欄」

  ※診断書は、障害及びその原因疾患を最も的確に表わす前記様式を用いることが多くなります。

  ※複数の障害が併存する重複障害で請求する場合、様式の異なる複数の診断書を用いる場合があります。

  →診断書の様式が異なる場合、同種の記載欄の番号が本頁記載のものとは異なる場合があります。

【注2】本頁の例示は、認定基準の例示及び公開情報から推察し構築したものも含む場合があります。

 ※「公開情報」:障害年金の認定に関する専門家会合の議事録等。

 

15.代謝疾患(糖尿病等)による「代謝障害」の障害状態要件

■代謝障害(及び合併症による障害)の原因となった請求傷病(代謝疾患(及び合併症))による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第15節1)。

 

※「代謝障害」:糖代謝、脂質代謝、蛋白代謝、尿酸代謝、その他の代謝異常がある。

※「代謝疾患」:認定対象の殆どは糖尿病。その他の代謝疾患もある。

※「糖尿病」:インスリンの作用不足から糖・脂質・蛋白質を含む殆ど全ての代謝異常を来すもの。

※「その他の代謝疾患」:痛風、全身性アミロイド―シス、ウイルソン病(肝レンズ核変性症)等。

※「合併症」:糖尿病合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽)、痛風腎等。

 ・日常生活や労働の制限の観点から、慢性合併症だけでなく、急性合併症も認定の対象となりうる。

※「糖尿病合併症」:糖尿病と相当因果関係が認められる合併症。糖尿病性疾患の全てを意味するものではない。

 →糖尿病と糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽とは、相当因果関係が認められる。

 →糖尿病と関連性はあっても相当因果関係が認められない合併症は、合併症の初診日に基づいて認定される。

  例1)糖尿病性白内障の術後後遺症(感染症)による視力障害(視力低下、失明等)が残った場合。

  ・この場合の相当因果関係は、糖尿病と白内障とは認められず、白内障と術後後遺症とは認められると考える。

  →「眼の障害用」の診断書に依る。糖尿病性白内障の初診日に基づいて認定されると考える。

  例2)糖尿病性動脈閉塞症により運動障害が生じている場合。

  ※「運動障害が生じているもの」:認定基準では例示の明記を避けているが、次のようなものが考えられる。

   例2-1)間歇性跛行が徐々に進行し、足壊疽による下肢切断から歩行障害が生じている場合。

   例2-2)糖尿病と関連性がある急性動脈閉塞症による下肢切断から歩行障害が生じている場合。

  →「肢体の障害用」の診断書に依る。当該閉塞症の初診日に基づいて認定される。

  例3)脂質代謝異常により心筋梗塞を発症し、心機能が低下した場合。

  →「循環器疾患の障害用」の診断書に依る。心筋梗塞の初診日に基づいて認定される。

  例4)脂質代謝異常により脳梗塞を発症し、運動障害(片麻痺)を生じた場合。

  →「肢体の障害用」の診断書に依る。脳梗塞の初診日に基づいて認定される。

 

●代謝疾患(及び合併症)による代謝障害(及び合併症による障害)の障害状態要件は、次の事項を十分考慮して総合的に判断される。

 <代謝疾患が糖尿病である場合(第15節2(2))>

 ・合併症の有無及びその程度

 ・代謝のコントロール状態

 ・治療及び病状の経過

 ・具体的な日常生活状況等

 <代謝疾患が糖尿病以外のものである場合(第15節2(11))>

 ・合併症の有無及びその程度

 ・治療及び病状の経過

 ・一般検査及び特殊検査の検査成績

 ・認定時の具体的な日常生活状況等

 

Ⅰ.糖尿病に関して考慮される事項(第14欄)

1.糖尿病の病型(第14欄1)

 ・次の該当する糖尿病の病型が考慮される。

(1)1型糖尿病:インスリン依存性糖尿病(発症要因が主に遺伝因子とされるもの)。

  →血糖コントロールの困難性が重視されるため、2型に比べ1型の方が等級認定を得易くなっている。

(2)2型糖尿病:インスリン非依存性糖尿病(発症要因が主に環境因子(生活習慣等)とされるもの)。

  →必要なインスリン治療を継続的に実施していない場合、糖尿病のみでは等級認定は得られなくなっている。

(3)その他の型(病名):妊娠糖尿病等。ただし、障害状態要件を満たすものは想定し難い。

 ・なお、腎性糖尿は、血糖値は正常だが尿糖陽性の場合であり、糖尿病ではない。

 

2.検査成績(第14欄2)

 ・必要なインスリン治療中の検査数値及び血糖管理の困難性が重視される。

(1)HbA1c(NGSP)(単位:%)

 ・HbA1c(NGSP)は、過去6か月間で2回以上の検査成績が求められる。

 ※「NGSP」:国際標準値を統一的に用いる趣旨。従前のJDS値は、NGSP値に換算する必要がある。

  →診断基準:6.5%以上、コントロール目標値:6.9%未満。

  →HbA1c(NGSP)が8.4%以上の場合、3級以上の目安となるが、絶対的なものではない。

(2)空腹時又は食後血糖値(単位:mg/dL)

 ・空腹時又は食後血糖値は、過去6か月間で2回以上の検査成績が求められる。

  →空腹時血糖値が140mg/dL以上の場合、3級以上の目安となるが、絶対的なものではない。

  →食後血糖値でも、インスリン治療中もなお血糖コントロールが困難な状態を示す参考値となりうる。

(3)各検査日より前に90日以上継続してインスリン治療を実施しているか否か(〇又は×のいずれか)。

 ・過去6か月間で2回以上の各検査日より前に90日以上継続してインスリン治療を実施しているか否か確認される。

 ・等級判定において検査成績から治療中の定常状態を適切に把握する前提として重視される確認項目といえる。

(4)空腹時又は随時血清Cペプチド値(ng/mL)

 ・空腹時又は随時血清Cペプチド値は、1回の検査成績で足りる。

 ※「血清Cペプチド値」:血糖不安定性や膵β細胞機能の枯渇を示す指標。インスリン分泌の枯渇を推定できる。

 ・劇症1型糖尿病の場合、0.2ng/mL以下(測定限界値以下)となるのが一般的である。

  →空腹時又は随時血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満の場合、等級判定における寄与は大きく増える。

 

3.治療及び病状の経過(第9欄)

 ・現在までの治療内容及び病状の経過等が考慮される(第9欄)。

(1)現在までの治療の内容

  例1)糖尿病の治療方法:食事療法、運動療法、薬物療法(薬剤名、用量、用法等)。

(2)治療の期間

(3)病状の経過

  例1)血糖コントロール状態の推移(高血糖や低血糖による症状の発生状況等)

  例2)合併症の有無や程度の履歴(神経症状の拡がりや進行履歴等)。

(4)診療回数

 ・現症日前1年間における診療回数が考慮される。

 ・入院した場合、入院日数1日は診療回数1回として計算する。

(5)手術歴(手術名及び手術年月日)

 ・眼合併症の手術等。

(6)その他参考となる事項

 

4.治療状況(第14欄3)

 ・現症時に実施中の薬物療法(薬剤名、分量、用法、用量)等が十分考慮される。

(1)インスリンによる場合:インスリン製剤を投与する療法の場合。

 ・薬剤名、1日投与総量(単位/日)、1日投与回数(回/日)、体重1kg当たり投与量(単位/kg)が考慮される。

  ※「薬剤名」:インスリン製剤の商品名又は一般名。作用別(発現時間・持続時間)や剤形別の分類がある。

  ※「作用別」:超即効型、速効型、持効型溶解、中間型、混合型がある。

  ※「剤形別」:プレフィルド/キット製剤、カートリッジ製剤、バイアル製剤がある。

 <インスリン製剤の投与方法(製剤の型、1日投与回数、用法)>

  例1)BOT療法(Basal supported oral therapy):持効型を1回、断続的に皮下注射する。

  例2)混合型インスリン製剤による場合:混合型を1~2回、断続的に皮下注射する。

  例3)追加インスリン療法(3回法):速効型又は超速効型を3回、断続的に皮下注射する。

  例4)インスリン強化療法:次の2つの方法がある。

   例4-1)血糖自己測定(SMBG)及び基礎-追加インスリン(Basal-Bolus)療法の併用。

   ※「SMBG」:seif-monitoring of blood glucose。簡易血糖測定器で血糖値を断続的に測定する。

   ※「Basal-Bolus療法」:持効型を1~2回及び速効型又は超速効型を3回、断続的に皮下注射する。

   例4-2)持続血糖測定(CGM)及びインスリンポンプ(CSII)療法の併用。

   ※「CGM」:continuous glucose monitoring。CGMセンサーで血糖値を5分毎24時間持続的に測定する。

   ※「CSII」:continuous subcutaneous insulin infusion。ポンプで超速効型を24時間持続的に皮下注入する。

(2)インスリン以外の治療(経口薬等)の場合、その具体的な治療方法が考慮される。

 例1)食事療法のみ:1日指示エネルギー量(kcal/日)等。

  →血糖コントロールの困難な状況とはいえず、合併症を伴わない限り、等級非該当となるものと考える。

 例2)経口糖尿病薬による:薬剤名(商品名又は一般名)、1日分量(mg/日)、投与日数(日)等が考慮される。

  →血糖コントロールの困難な状況とはいえず、合併症を伴わない限り、等級非該当となると考える。

  ※「経口糖尿病薬」:現在、次の8種類があるが、インスリン製剤に比べて等級判定への寄与は少ない。

  例2-1)スルホニル尿素薬(SU)

  例2-2)ビグアナイド薬(BG)

  例2-3)α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)

  例2-4)インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬:TZD)

  例2-5)速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系薬)

  例2-6)DPP4阻害薬

  例2-7)SGLT2阻害薬

  例2-8)配合薬

 

5.血糖コントロールの困難な状況(第14欄4):急性合併症の観点から検討される。

 ※「困難」:インスリン治療により血糖コントロールの良好な1型糖尿病の方も救済する趣旨である。

(1)「意識障害により自己回復ができない重症低血糖」の有無、頻度(回/年)及び当該所見。

 ・意識障害により自己回復ができない重症低血糖が年12回以上ある場合、等級該当しうる(同イ)。

  ※「自己回復ができない」:医療的な介助(グルカゴンやブドウ糖の処方)により回復できる場合を含む。

  ※「年12回以上」:月平均1回程度。

(2)「糖尿病ケトアシドーシスによる入院」の有無、頻度(回/年)及び所見。

 ・インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスによる入院が年1回以上の場合、等級該当しうる(同ウ)。

  ※「年1回以上」:インスリン治療中が前提なので、糖尿病ケトアシドーシスの初発の入院は回数から除かれる。

(3)「高血糖高浸透圧症候群による入院」の有無、頻度(回/年)及び所見。

 ・インスリン治療中に高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上の場合、等級該当しうる(同前)。

  ※「年1回以上」:インスリン治療中が前提なので、高血糖高浸透圧症候群の初発の入院は回数から除かれる。

 

6.合併症(第14欄5、第12欄、第13欄):慢性合併症の観点から検討される。

 ・合併症による障害の有無及び症状・所見(過去3か月で病状を最もよく表しているもの)等が十分考慮される。

(1)「眼の障害」:眼合併症の有無及び症状・所見等が考慮される(第14欄5(1))。

  例1)糖尿病性網膜症による視覚障害(視野狭窄、失明等)。

  →「眼の障害」の障害状態要件参照。

(2)「神経系統の障害」:糖尿病性神経障害の有無及び症状・所見等が考慮される(第14欄5(2))。

 ・糖尿病性神経障害には、次のようなものがある。国際的合意による診断基準や病型分類は確立されていない。

 <多発神経障害>

 ・著明な知覚の障害と認められる場合、等級判定に寄与しうる。

 ・単なる痺れや感覚異常(アキレス腱反射喪失等)は認定の対象とならない(第9節2(3)参照)。

  例1)下肢:腓骨神経障害(腓骨神経麻痺):下腿外側部の触覚失認、足背屈力喪失等。

  例2)上肢:手根管症候群、尺骨神経麻痺等による触覚失認等。

  →「神経系統の障害」の障害状態要件参照。

 <自律神経障害>

 ・重度の自律神経症状(著明な自律神経失調)と認められる場合、等級判定に寄与しうる。

  例3)糖尿病性昏睡:糖尿病性ケトアシドーシス(昏睡)、高血糖高浸透圧性昏睡。

  例4)重症低血糖:意識障害(昏睡等)により自己回復ができない程度のもの。

  例5)著明な起立性低血圧:失神等が頻発する場合。

  例6)著明な胃無力症:心窩部の激痛、重度の悪心、易疲労感等が頻発する場合。

  例7)著明な便通異常:重度の下痢等が頻発する場合。

  →「神経系統の障害」の障害状態要件参照。

 <単神経障害>

 ・次のような局所性の神経障害のうち重篤なものは、等級判定に寄与しうる。

  例8)下肢:糖尿病性筋萎縮症(腰仙部根神経叢神経障害):一側臀部・大腿部の激痛、筋委縮・筋力低下等。

  例9)脳神経障害:外眼筋麻痺(眼瞼下垂、複視、眼球運動制限)、顔面神経麻痺、聴神経麻痺等。

  例10)四肢・体幹:四肢や体幹部の有痛性神経障害(激痛等)。

  →「神経系統の障害」の障害状態要件参照。

(3)「肢体の障害」:肢体の運動障害の有無及び症状・所見等が考慮される(第14欄5(3))。

  例11)下肢:糖尿病性壊疽による運動障害(下肢切断による歩行障害)。

  →「下肢の障害」の障害状態要件参照。本欄の記載で足り、肢体の障害用の診断書の提出は不要と考える。

(4)「腎機能障害」:腎合併症(糖尿病性腎症)がある場合、腎疾患の欄の記載も考慮される(第12欄)。

  例12)糖尿病性腎症による透析導入。

  →「腎機能障害」の障害状態要件参照。

(5)「肝機能障害」:肝疾患で糖尿病を合併する場合、肝疾患の欄の記載も考慮される(第13欄)。

  例13)肝性糖尿病。糖尿病との相当因果関係は否認され、糖尿病の初診日に基づいて認定されると考える。

  →「肝機能障害」の障害状態要件参照。

  例14)肝性糖尿病の腎症合併症による透析導入。

  →「肝機能障害」及び「腎機能障害」の障害状態要件参照。更に腎疾患の欄の記載も考慮される(第12欄)。

(6)「循環器機能障害」:糖尿病との相当因果関係は否認される。循環器疾患の障害用の診断書に依る。

(7)「精神の障害」:糖尿病との相当因果関係は否認される。精神の障害用の診断書に依る。

 

8.その他の代謝疾患(糖尿病以外)の場合(第15欄)

 ・その他の代謝疾患は、自覚症状、他覚所見、検査成績等が総合的に考慮される(第15欄)。

 ・その他の代謝疾患は、合併症の有無及びその程度が十分考慮される(第15節2(10))。

  →腎合併症:腎疾患の欄(第12欄)の記載も考慮される。

  →肝合併症:肝疾患の欄(第13欄)の記載も考慮される。

  →糖尿病を合併した場合:糖尿病(第14欄)の記載も考慮される。

  →心疾患を合併した場合:「循環器疾患の障害用」の診断書の提出も求められうる。

 ・その他の代謝疾患は、一般検査及び特殊検査の検査成績が十分考慮される(第15節2(10))。

 <核酸代謝異常>

  例1)痛風:痛風発作(間歇的な関節の激痛等)が頻発する場合。

  ※「痛風」:高尿酸血症が持続した結果として関節内に析出した尿酸塩が起こす結晶誘発性関節炎。

  例2)痛風で腎症を合併した場合(痛風腎)。痛風の初診日に基づいて認定されると考える。

   →「腎機能障害」の障害状態要件参照。腎疾患の欄の記載も考慮される(第12欄)。

  例3)痛風で糖尿病と腎症を合併した場合。痛風の初診日に基づいて認定されると考える。

   →「腎機能障害 」及び「代謝障害」の障害状態要件参照。更に糖尿病の欄の記載も考慮される(第14欄)。

 <蛋白代謝異常>

  例5)全身性アミロイド―シス:全身衰弱、貧血、心症状、腎症状(ネフローゼ等)、手足の痺れ等。

  ・アミロイド(異常蛋白)は、全身の組織(脳、心臓、腎臓、肝臓、神経等)に沈着し、機能障害を来しうる。

  ・心アミロイドーシス:心筋細胞にアミロイドが沈着し、心肥大等を起す。進行すると心不全を来す。

   →「循環器機能障害」の障害状態要件参照。「循環器疾患の障害用」の診断書に依る。

  ・腎アミロイドーシス:腎臓にアミロイドが沈着し、ネフローゼ等を起す。進行すると慢性腎不全を来す。

   →「腎機能障害」の障害状態要件参照。腎疾患の欄の記載も考慮される(第12欄)。

  ・肝アミロイドーシス:肝臓にアミロイドが沈着し、肝機能に代謝障害を起す。

   →「肝機能障害」の障害状態要件参照。肝疾患の欄の記載も考慮される(第13欄)。

 <銅代謝異常>

  例6)ウイルソン病(肝レンズ核変性症):肝臓や脳等に銅が蓄積し、肝障害や中枢神経障害等を来す。

  ・ウイルソン病では、カイザー・フライシャー角膜輪(角膜の辺縁に茶褐色や緑色の輪)がみられる。

  ・ウイルソン病による「肝障害」:劇症肝不全、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変等。

   →「肝機能障害」の障害状態要件参照。肝疾患の欄の記載も考慮される(第13欄)。

  ・ウイルソン病による「中枢神経障害」:錐体外路症状(ジストニア等)、精神症状(抑うつ、知的退行)等。

   →「精神の障害」の障害状態要件参照。「精神の障害用」の診断書に依る。

  ・ウイルソン病による「腎障害」:腎障害(血尿、結石、尿細管障害)で著明なもの(激痛等)。

   →「腎機能障害」の障害状態要件参照。腎疾患の欄の記載も考慮される(第12欄)。

  ・ウイルソン病による「肢体の障害」:重度の関節炎(激痛等)による歩行障害。

   →「下肢の障害」の障害状態要件参照。「肢体の障害用」の診断書に依る場合も可能と考える。

  ・ウイルソン病による「循環器機能障害」:心筋障害による心機能低下等。

   →「循環器機能障害」の障害状態要件参照。「循環器疾患の障害用」の診断書に依る。

 <その他内分泌代謝異常>

  例7)甲状腺機能亢進症に精神障害を合併した場合。

  ・代謝疾患と精神疾患の相当因果関係は否認される。

  ・甲状腺機能亢進症のみの場合、一般状態区分との整合性が鍵と考える。

  ・合併症(精神障害)で等級判定をする場合、「精神の障害用」の診断書に依る。

   →「精神の障害」の障害状態要件参照。

 

9.一般状態(一般状態区分表)(第11欄)

 ・次の一般状態区分表の区分は、代謝障害(及び合併症による障害)に共通する必須の考慮要素である。

 例1)透析導入や透析困難症の場合、通常はイ~エが想定される(2級認定)。オの場合は1級認定も有り得る。

 例2)不安定型糖尿病による低血糖や高血糖で年数回入院しても、通常就労できている場合、イに相当する。

  ※「不安定型」:ブリットル型。インスリン依存状態であって、血糖変動が激しく、血糖コントロールが難しい。

 

【一般状態区分表】

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

10.現症時の具体的な日常生活活動能力及び労働能力(第16欄)

 ・現症時の具体的な日常生活活動(ADL)能力及び労働能力は、必ず把握され、考慮される(同欄朱書)。

 ・客観的所見に基づくADL能力及び労働能力は、十分考慮される。

 

11.予後(第17欄)

 ・予後は、必須記載事項として考慮される(同欄朱書)。

  例1)不良:病状の進行の見通し。

  例2)術後予後:網膜硝子体手術等を施行した場合。

  例3)生命予後:余命記載があるもの。

  例4)不詳:予後が診断時に判断できない場合。

 

12.備考(第18欄)

 ・障害認定時期や等級判定に影響を及ぼす事項の記入が要求される場合がある。

 

 

【1級】(代謝疾患(糖尿病等)による「代謝障害」の障害の程度)

<1級相当の代謝疾患(糖尿病等)による代謝障害(及び合併症による障害)>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、代謝疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第15節1)

 

 <1級相当の1型又は2型糖尿病(合併症なし)>

 例1)インスリン分泌能について、次の4つ全てに該当するもの(第15節2(5)ア、尚書参考)。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ 空腹時又は随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満(内因性インスリン分泌が枯渇している状態)である。

  ③ 一般状態区分が「オ」に該当する。

  ④ 前記「オ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 

 <1級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性神経障害)>

 例2)低血糖について、次の4つ全てに該当するもの(第15節2(5)イ、尚書参考)。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ 意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月3回以上ある。

  ③ 一般状態区分が「オ」に該当する。

  ④ 前記「オ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 例3)ケトアシドーシスについて、次の4つ全てに該当するもの(第15節2(5)ウ、尚書参考)。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスによる入院が年3回以上ある。

  ③ 一般状態区分が「オ」に該当する。

  ④ 前記「オ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 例4)高血糖について、次の4つ全てに該当するもの(第15節2(5)ウ、尚書参考)。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ インスリン治療中に高血糖高浸透圧症候群による入院が年3回以上ある。

  ③ 一般状態区分が「オ」に該当する。

  ④ 前記「オ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 

 <1級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性壊疽)>

 例5)糖尿病性壊疽により両下肢とも足関節以上で切断したもの(第15節2(7)、第7節第2の2(2)ア)。

  ※「足関節」:横足根関節(ショパール関節)。

  →その他の具体例につき「下肢の障害」の障害状態要件参照。

 

 <1級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性網膜症)>

 例6)糖尿病性網膜症による眼の障害が1級相当のもの(第15節2(7))。

  →具体例につき「眼の障害」の障害状態要件参照。

 

 <1級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性腎症)>

 例7)次の3つ全てに該当するもの(第15節2(5)尚書参考)。

  ① 人工透析を導入している(透析導入が必要だが医学的に導入困難な場合を含む)。

  ⓶ 一般状態区分が「オ」に該当する。

  ③ 前記「オ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 

【2級】(代謝疾患(糖尿病等)による「代謝障害」の障害の程度)

<2級相当の代謝疾患(糖尿病等)による代謝障害(及び合併症による障害)>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、代謝疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第15節1)

 

 <2級相当の1型又は2型糖尿病(合併症なし)>

 例1)インスリン分泌能について、次の4つ全てに該当するもの(第15節2(5)ア、尚書参考)。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ 空腹時又は随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満(内因性インスリン分泌が枯渇している状態)である。

  ③ 一般状態区分が「エ」又は「ウ」に該当する。

  ④ 前記「エ」又は「ウ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 

 <2級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性神経障害)>

 例2)低血糖について、次の4つ全てに該当するもの(第15節2(5)イ、尚書参考)。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ 意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月2回以上ある。

  ③ 一般状態区分が「エ」又は「ウ」に該当する。

  ④ 前記「エ」又は「ウ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 例3)ケトアシドーシスについて、次の4つ全てに該当するもの(第15節2(5)ウ、尚書参考)。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスによる入院が年2回以上ある。

  ③ 一般状態区分が「エ」又は「ウ」に該当する。

  ④ 前記「エ」又は「ウ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。

 例4)高血糖について、次の4つ全てに該当するもの(第15節2(5)ウ、尚書参考)。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ インスリン治療中に高血糖高浸透圧症候群による入院が年2回以上ある。

  ③ 一般状態区分が「エ」又は「ウ」に該当する。

  ④ 前記「エ」又は「ウ」の状態と、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等との整合性がある。 

 例5)糖尿病性壊疽により一下肢を足関節以上で切断したもの(第15節(7)、第7節第2の2(2)ア)。

  ※「足関節」:横足根関節(ショパール関節)。

  →その他の具体例につき「下肢の障害」の障害状態要件参照。

 

 <2級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性網膜症)>

 例6)糖尿病性網膜症による眼の障害が2級相当であるもの(第15節2(6)、第1節参照)。

  →具体例につき「眼の障害」の障害状態要件参照。

 

 <2級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性腎症)>

 例7)糖尿病性腎症による腎機能障害について、次の2つ全てに該当するもの(第15節2(9)、第12節参考)。

  ① 人工透析を導入している(透析導入が必要だが医学的に導入困難な場合を含む)。

  ⓶ 一般状態区分が「エ」、「ウ」又は「イ」(透析導入の効果が良好な場合を含む。)に該当する。

 

【3級】(代謝疾患(糖尿病等)による「代謝障害」の障害の程度)

<3級相当の代謝疾患(糖尿病等)による代謝障害(及び合併症による障害)>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第15節1)

 

 <3級相当の1型又は2型糖尿病(合併症なし)>

 例1)インスリン分泌能について、次の3つのいずれにも該当するもの(第15節2(5)ア、第14欄2)。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ 空腹時又は随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満(内因性インスリン分泌が枯渇している状態)である。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「イ」に該当する。

 

 <3級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性神経障害)> 

 例2)低血糖について、次の3つ全てに該当するもの(第15節2(5)イ、第14欄2、4(1))。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ 意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上ある。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「イ」に該当する。

 例3)ケトアシドーシスについて、次の3つ全てに該当するもの(第15節2(5)ウ、第14欄2、4(2))。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスによる入院が年1回以上ある。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「イ」に該当する。

 例4)高血糖について、次の3つ全てに該当するもの(第15節2(5)ウ、第14欄2、4(3))。

  ① 各検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を実施していることが確認できている。

  ⓶ インスリン治療中に高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上ある。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「イ」に該当する。

 例5)糖尿病性壊疽により一下肢をリスフラン関節以上で切断したもの(第15節2(7)、第7節第2の1)。

  ※「リスフラン関節」:足根中足関節。

  →その他の具体例につき「下肢の障害」の障害状態要件参照。

 

 <3級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性網膜症)>

 例6)糖尿病性網膜症による眼の障害が3級相当であるもの(第15節2(6)、第1節参照)。

  →具体例につき「眼の障害」の障害状態要件参照。

 

 <3級相当の1型又は2型糖尿病(合併症あり:糖尿病性腎症)>

 例7)糖尿病性腎症による腎機能障害が3級相当であるもの(第15節2(9)、第12節参照)。

  →具体例につき「腎機能障害」の障害状態要件参照。