障害状態要件(肝機能障害)

13.「肝機能障害」の障害状態要件

 

※上記画像と本文の内容は無関係です。

 

【目次】

13.「肝疾患による肝機能障害」の障害状態要件

 

【注1】以下、根拠条文等について、次のように略記する場合があります。

・「節」は「障害認定基準」、「欄」は「診断書」を指すものとします。

 例1)「認定基準第3第1章第13節」→「第13節」

 例2)「腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用の診断書(様式120号の6-(2))第13欄」→「第13欄」

  ※肝疾患による肝機能障害の診断書は、前記様式を用います。

  ※肝癌による障害(全身衰弱等)の場合、「その他の障害用」(様式120号の7)の診断書を用います。

  ※複数の障害が併存する重複障害で請求する場合、様式の異なる複数の診断書を用いる場合があります。

  →診断書の様式が異なる場合、同種の記載欄の番号が本頁記載のものとは異なる場合があります。

【注2】本頁の例示は、認定基準の例示及び公開情報から推察し構築したものも含む場合があります。

 ※「公開情報」:障害年金の認定に関する専門家会合の議事録等。

 

13.「肝疾患による肝機能障害」の障害状態要件

■肝機能障害の原因となった請求傷病による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第13節1)。

 

※「請求傷病」:肝機能障害の原因傷病(肝疾患)。

※「肝疾患」:慢性かつ瀰漫(びまん)性の肝疾患の結果生じた肝硬変及びそれに付随する病態。

 ・慢性肝炎は、原則認定対象外だが、障害の状態が1~3級相当の場合、認定対象となる(第13節2(9))。

 ・肝癌は、第13節及び第16節(検査項目及び臨床所見の異常がない場合、第16節)に従う(第13節2(11))。

※「肝硬変」:全ての慢性進行性肝疾患の終末像。高度の線維化、肝小葉の破壊、びまん性の再結節形成がみられる病態。黄疸、腹水、肝性脳症、消化管出血等の肝不全症状を呈する非代償性肝硬変と、同症状のない代償性肝硬変がある。肝硬変は、発生原因により病状や進行状況が異なるため、固有の病態に併せて認定される(第13節2(8))。

 例1)ウイルス性肝硬変

  例1-1)B型肝炎ウイルスによるウイルス性肝硬変

  例1-2)C型肝炎ウイルスによるウイルス性肝硬変

 例2)自己免疫性肝炎による肝硬変

 例3)アルコール性肝硬変(ただし、継続して必要な治療を行っていること及び検査日より前に180日以上アルコールを摂取していないことについて確認のできた場合に限り、認定の対象となる。)(第13節2(8))

 例4)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)による肝硬変

 例5)胆汁うっ帯性肝硬変

 例6)代謝性肝硬変

  例6-1)ウイルソン病:銅代謝異常(Cu蓄積)による障害(肝不全、中枢神経障害、腎不全等)を来す疾患。

  例6-2)ヘモクロマトーシス:鉄代謝異常(Fe蓄積)による障害(肝不全、肝癌等)を来す疾患。

※「肝硬変に付随する病態」:食道・胃などの静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝癌を含む。

 

●肝疾患による肝機能障害の障害状態要件は、次の肝疾患に関わる共通事項を考慮して総合的に判断される。

 

Ⅰ.肝疾患に関わる共通事項

1.臨床所見(第13欄1)

(1)自覚症状

 ①「全身倦怠感」の有無(無・有・著)

  ・全身倦怠感が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・全身倦怠感が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ⓶「発熱」の有無(無・有・著)

  ・発熱が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・発熱が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ③「食欲不振」の有無(無・有・著)

  ・食欲不振が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・食欲不振が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ④「悪心・嘔吐」の有無(無・有・著)

  ・悪心・嘔吐が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・悪心・嘔吐が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ⑤「皮膚掻痒感」の有無(無・有・著)

  ・皮膚掻痒感が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・皮膚掻痒感が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ⑥「有痛性筋痙攣」の有無(無・有・著)

  ・有痛性筋痙攣が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・有痛性筋痙攣が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ⑦「吐血・下血」の有無(無・有・著)

  ・吐血・下血が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・吐血・下血が「著」の場合:高度異常に相当する。

(2)他覚所見

 ①「肝萎縮」の有無(無・有・著)

  ・肝萎縮が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・肝萎縮が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ⓶「脾腫大」の有無(無・有・著)

  ・脾腫大が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・脾腫大が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ③「浮腫」の有無(無・有・著)

  ・浮腫が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・浮腫が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ④「腹水」の有無(無・有・有(難治性))

  ・腹水が「有」の場合:中等度異常(第13節2(4))。

  ・腹水が「有(難治性)」の場合:高度異常(同前)。

 ⑤「黄疸」の有無(無・有・著)

  ・黄疸が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・黄疸が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ⑥「腹壁静脈怒張」の有無(無・有・著)

  ・腹壁静脈怒張が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・腹壁静脈怒張が「著」の場合:高度異常に相当する。

 ⑦「肝性脳症」の有無(無・有( )度)

  ・肝性脳症が「有(Ⅰ)度」の場合:中等度異常(第13節2(4)表1 昏睡度分類)。

  ・肝性脳症が「有(Ⅱ~Ⅴ)度」の場合:高度異常(同前)。

  →Child-Pughによるgrade(第13欄2)の決定要素の1つ。

 ⑧「出血傾向」の有無(無・有・著)

  ・出血傾向が「有」の場合:中等度異常に相当する。

  ・出血傾向が「著」の場合:高度異常に相当する。

(3)検査成績

 ・検査には、次のようなものがある(第13節2(3))。

  例1)血球算定検査

   →検査項目:血小板数(第13欄1(3))。

  例2)血液生化学検査

   →検査項目:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、血清総ビリルビン、アルカリフォスターゼ、血清総蛋白、血清アルブミン、総コレステロール、血中アンモニア(第13欄1(3))。

  例3)肝炎ウイルス検査

  例4)血液凝固系検査(凝固・線溶検査等)

   →検査項目:プロトロンビン時間(第13欄1(3))。

  例5)免疫学的検査(腫瘍マーカー検査等)

   →検査項目:AFP、PIVKA⁻Ⅱ(第13欄1(3))。

  例6)超音波検査

   →その他の所見(第13欄8(2))。

  例7)CT・MRI検査

   →その他の所見(第13欄8(2))。

  例8)腹腔鏡検査

   →特発性細菌性腹膜炎その他肝硬変症に付随する病態の治療歴の所見(第13欄6)。

  例9)肝生検

   →肝生検の所見(第13欄3)。

  例10)上部消化管内視鏡検査

   →食道・胃等の静脈瘤の所見(第13欄4)。

  例11)肝血管造影

 ・検査値は、過去6ヶ月内で少なくとも2回分以上が必要である(記入上の注意)。

 ・検査値は、肝疾患の経過中、最も適切に病状を表わしていると思われるものが重視される(第13節2(7))。

 ・基準値は、必ずしも正常値ではない。各疾患の特性及び診療施設の基準等が参考とされる(同欄1(3))。

 <検査項目>

 ①「AST(GOT)」(単位:IU/L)

  ※「AST」:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの略称。従来はGOTと呼ばれていた。

  ※「GOT」:グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼの略称。近年はASTと呼ばれている。

  ・AST(GOT)は、測定方法や単位により異なるため、各疾患の特性及び施設基準等に留意して参考とされる。

   例1)基準値(JCCLS法、単位:U/L):13~30(国立がん研究センター、2016年)。

   例2)基準値(方法不明、単位:IU/L):50未満(旧認定基準、平成14年)。

 ⓶「ALT(GPT)」(単位:IU/L):殆ど肝臓に存在し、異常時高値となる酵素。

  ※「ALT」:アラニンアミノトランスフェラーゼの略称。従来はGPTと呼ばれていた。

  ※「GPT」:グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼの略称。近年はALTと呼ばれている。

  ・ALT(GPT)は、測定方法や単位により異なるため、各疾患の特性及び施設基準等に留意して参考とされる。

   例1)基準値(JCCLS法、単位:U/L):男性10~42、女性7~23(国立がん研究センター、2016年)。

   例2)基準値(方法不明、単位:IU/L):50未満(旧認定基準、平成14年)。

 ③「γ-GTP」(単位:IU/L)

  ・γ-GTPは、測定方法や単位により異なるため、各疾患の特性及び施設基準等に留意して参考とされる。

   例1)基準値(JCCLS法、単位:U/L):男性13~64、女性9~32(国立がん研究センター、2016年)。

   例2)基準値(方法不明、単位:IU/L):50未満(旧認定基準、平成14年)。

 ④「血清総ビリルビン(T-Bil)」(単位:mg/dL)

  ・T-Bilは、施設基準等の違いに拘らず、異常の判断に大差は生じないと考えられる。

   例1)基準値(方法不明、単位:mg/dL):0.3~1.2(第13節2(4))。

    →異常:中等度異常(2.0以上3.0以下)、高度異常(3.0超)(同前)。

   例2)基準値(JCCLS法、単位:mg/dL):0.4~1.5(国立がん研究センター、2016年)。

 ⑤「アルカリホスファターゼ(ALP)」(単位:IU/L)

  ・ALPは、測定方法や単位により異なる。各疾患の特性及び施設基準等に留意して参考とされる。

   例1)基準値(JCCLS法、単位:U/L):106~322(国立がん研究センター、2016年)。

   例2)基準値(Bessey法、単位:IU/L):0.8~2.3(旧認定基準、平成25年)。

    →異常:中等度異常(3.5以上10未満)、高度異常(10以上)(同前)。

   例3)基準値(JSCC法、単位:IU/L):90~350(旧認定基準、平成14年)。

 ⑥「血清総蛋白(TP)」(単位:g/dL)

  ・TPは、肝疾患及び合併症(腎疾患)で考慮される検査項目である。

  ・TPは、施設基準等の違いに拘らず、異常の判断結果が概ね同じになると考えられる。

   例1)基準値(方法不明、単位:g/dL):6.8~8.5(旧認定基準、平成14年)。

    →異常(合併症:ネフローゼ症候群の疑い):6.0以下(第12節2(4)⓶区分ウ)。

   例2)基準値(JCCLS法、単位:g/dL):6.6~8.1(国立がん研究センター、2016年)。

 ⑦「血清アルブミン(ALB)」(単位:g/dL)及び測定方法(BCG法・BCP法・改良型BCP法)

  ・ALBは、施設基準等の違いに拘らず、異常の判断結果が概ね同じになると考えられる。

   例1)基準値(方法不明、単位:g/dL):4.2~5.1(第13節2(4))。

    →異常:中等度異常(3.0以上3.5以下)、高度異常(3.0未満)。

   例2)基準値(JCCLS法、単位:g/dL):4.1~5.1(国立がん研究センター、2016年)。

 ⑧「A/G比(アルブミン・グロブリン比)」

  ・A/G比は、施設基準等の違いに拘らず、異常の判断結果が概ね同じになると考えられる。

   例1)基準値:1.1~2.0(認定基準、平成14年)。

   例2)基準値:1.30~2.20(国立がん研究センター中央病院、2016年)。

 ⑨「血小板数(PLT)」(単位:万/μL)

  ・PLTは、施設基準等の違いに拘らず、異常の判断結果が概ね同じになると考えられる。

   例1)基準値(方法不明、単位:万/μL):13~35(第13節2(4))。

    →異常:中等度異常(5以上10未満)、高度異常(5未満)(同前)。

   例2)基準値(JCCLS法、単位:万/μL):15.8~35.8(国立がん研究センター中央病院、2016年)。

 ⑩「プロトロンビン時間(PT)」(単位:%)

  ・PTは、施設基準等の違いに拘らず、異常の判断結果が概ね同じになると考えられる。

   例1)基準値(単位:%):70超~130(第13節2(4))。

    →異常:中等度異常(40以上70以下)、高度異常(40未満)(同前)。

   例2)基準値(単位:%):70~140(国立がん研究センター、2016年)。

 ⑪「総コレステロール(TC)」(単位:mg/dL)

  ・TCは、施設基準等の違いに拘らず、異常の判断結果が概ね同じになると考えられる。

   例1)基準値(JCCLS法、単位:mg/dL):142~248(国立がん研究センター、2016年)。

   例2)基準値(方法不明、単位:mg/dL):130~220(旧認定基準、平成14年)。  

 ⑫「血中アンモニア(NH₃」(単位:μg/dL)

  ・NH₃は、施設基準等の違いにより、異常の判断結果が異なる場合が生じうる。

   例1)基準値(JCCLS法、単位:μg/dL):12~66(国立がん研究センター、2016年)。

   例2)基準値(方法不明、単位:μg/dL(mLから調整済)):11.5~12.5(旧認定基準、平成14年)。

 ⑬「AFP(αフェト蛋白)」(単位:ng/mL):肝細胞癌(ヘパトーマ)の腫瘍マーカー。

   例1)基準値(CLIA法、単位:ng/mL):10.0以下(国立がん研究センター、2016年)。

 ⑭「PIVKA-Ⅱ(ビタミンK欠乏性蛋白-Ⅱ)」(単位:mAU/mL):肝細胞癌(ヘパトーマ)の腫瘍マーカー。

   例1)基準値(方法不明、単位:ng/mL):40未満(国立がん研究センター、2016年)。

 ⑮ アルコール性肝硬変の場合、次の両方に該当する(〇である)場合のみ、認定対象となる(第13節2(8))。

  ⅰ)「180日以上アルコールを摂取していない。」(〇・×)

  ⅱ)「継続して必要な治療を実施している。」(〇・×))

 

2.Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類によるgrade(グレード)(第13欄2)

 ・A(5・6)、B(7・8・9)、C(10・11・12以上)のうち〇で囲んだ点数が考慮される(記入上の注意)。

 ※「Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類」:国際的な肝機能障害の重症度分類。肝不全の主な症状(肝性脳症、腹水)と血液検査等による各検査値(血清アルブミン等)の重症度判定を点数化し総計したもの(大きいものほどより重症。)について、点数に応じて3つのグレード(A:5~6点、B:7~9点、C:10~15点)に分けたもの。

 

【Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類】

評価項目(臨床所見又は検査値) 1点 2点 3点
肝性脳症(昏睡度※1) 軽度(Ⅰ度・Ⅱ度) 昏睡(Ⅲ度以上)
腹水※2 軽度 中程度以上
血清アルブミン(単位:g/㎗) 3.5超 2.8以上3.5以下 2.8未満
プロトロンビン時間(単位:%) 70超 40以上~70以下 40未満
血清総ビリルビン(単位:mg/㎗) 2.0未満 2.0以上3.0以下 3.0超

※1:Child-Pugh分類における肝性脳症の「昏睡度」の重症度判定は、認定基準では次のように取り扱われる。

 →中等度異常(Ⅰ度)、高度異常(Ⅱ度以上)(第13節2(4)表1 昏睡度分類)。

※2:Child-Pugh分類における肝性「腹水」の重症度判定は、認定基準では次のように取り扱われる。

 →中等度異常(腹水あり)、高度異常(難治性腹水あり)(第13節2(4))。

 

【表1 昏睡度分類】

 ・肝性脳症の昏睡度分類(昏睡度)は、次のように5段階(Ⅰ~Ⅴ度)に分類される(第13節2(4)表1)。

昏睡度 精神症状 参考事項
Ⅰ度 ・睡眠―覚醒リズムに逆転。
・多幸気分ときに抑うつ状態。
・だらしなく、気にとめない態度。
・あとで振り返ってみて判定できる。
Ⅱ度 ・指南力(時、場所)障害。
・物をとり違える(confusion)。
・異常行動(例:お金を撒く、化粧品をゴミ箱に捨てるなど)。
・ときに傾眠状態(普通の呼びかけで開眼し会話ができる)。
・無礼な言動があったりするが、他人の指示には従う態度を見せる。
・興奮状態がない。
・尿便失禁がない。
・羽ばたき振戦あり。
Ⅲ度 ・しばしば興奮状態又はせん妄状態を伴い、反抗的態度を見せる。
・嗜眠状態(殆ど眠っている)。
・外的刺激で開眼しうるが、他人の指示には従わない、又は従えない(簡単な命令には応じえる)。
・羽ばたき振戦あり。
(患者の協力が得られる場合)
・指南力は高度に障害。
Ⅳ度 ・睡眠(完全な意識の消失)。
・痛み刺激に反応する。
・刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどが見られる。
Ⅴ度 ・深昏睡
・痛み刺激にも全く反応しない。
 

 

3.肝生検(第13欄3)

(1)肝生検の「有無」及び「検査年月日」

 ※「肝生検」:肝組織所見に基づく肝病理診断において、肺線維化を最も正確に診断できる検査法。

(2)肝生検の「所見」

 ・活動性を評価する「グレード」及び線維化を評価する「ステージ」並びに「所見」の内容が考慮される。

 ・グレードとステージは、国内では専ら新犬山式(新犬山分類、1996年)により付与される。

  ※「新犬山式」:慢性肝炎の肝組織診断基準(新犬山分類、1996年)。

   ・肝硬変の進行度を活動性(壊死・炎症所見)の程度と線維化の程度から評価したもの。

 

【活動性(activity)の分類(grading)】

・活動性の評価は、肝細胞の壊死や炎症に基づいて、4段階のグレードを付与して行われる(grading)。

活動性(activity)の分類 付記 壊死・炎症所見の程度
グレード0 A0 壊死・炎症所見なし(活動性なし)
グレード1 A1 軽度の壊死・炎症所見(軽度活動性)
グレード2 A2 中等度の壊死・炎症所見(中等度活動性)
グレード3 A3 高度の壊死・炎症所見(高度活動性)

 

【線維化(fibrosis)の分類(staging)】

・線維化の評価は、門脈域から線維化が伸展し小葉が改築され肝硬変へ進展する段階を、まず4つ(F0~F3)のいずれかに当て嵌め、更に結節形成傾向が全体に認められる場合のみ肝硬変(F4)に改めて行われる(staging)。

線維化(fibrosis)の分類 付記 線維化の程度
ステージ0 F0 線維化なし
ステージ1 F1 門脈域の線維性拡大
ステージ2 F2 線維性架橋形成(門脈近辺に線維化が増える)
ステージ3 F3 小葉の歪みを伴う線維性架橋形成(門脈間の線維化が進む)
ステージ4 F4 肝硬変

 

4.食道・胃等の静脈瘤(第13欄4)

 <食道・胃等の静脈瘤の場合>

 ・下記事項及び治療効果(第9欄)を参考に検査項目及び臨床所見を加え、総合認定される(第13節2(10))。

(1)「食道・胃等の静脈瘤」の有無及び検査年月日

(2)「吐血・下血の既往」の有無及びその頻度(回数)

(3)「治療歴」の有無及びその頻度(回数)

 

5.ヘパトーマ治療歴

 ※「ヘパトーマ」:肝細胞癌。肝癌の一種。合併症として肝硬変を伴うこともある。

(1)「ヘパトーマ治療歴」の有無

(2)「手術」の回数

(3)「局所療法」の回数

(4)「動脈塞栓術」の回数

(5)「放射線療法」の回数

(6)「化学療法」の回数

 

6.特発性細菌性腹膜炎その他肝硬変症に付随する病態の治療歴(第13欄6)

 <発性細菌性腹膜炎その他肝硬変症に付随する病態の治療歴(第13欄4及び5以外のもの)がある場合>

 ・治療経過(頻度・効果)を参考に検査成績及び臨床所見の異常を加え、総合的に認定される(第13節2(10))。

 

7.治療の内容(第13欄7)

 ・「現症日時点」における次の内容(使用中の薬剤や実施中の治療法)が考慮される(記入上の注意)。

(1)「利尿剤」の有無

(2)「特殊アミノ酸製剤」の有無

 ※「特殊アミノ酸製剤」:肝障害や腎障害を来す特殊な病態に対し用いるアミノ酸製剤。

(3)「抗ウイルス療法」の有無

 ※「抗ウイルス療法」:C型肝炎ウイルス等の排出を図る薬物療法。次のようなものがある。

  ① インターフェロンフリー治療:インターフェロンを用いず、抗ウイルス薬を用いる。

  ⓶ インターフェロン治療:インターフェロン(α製剤・β製剤)を用いる。抗ウイルス薬と併用する場合もある。 

(4)「アルブミン・血漿製剤」の有無

(5)「血小板輸血」の有無

(6)「その他」の使用薬剤や治療法の有無

 例)肝庇護療法:ウイルス排除効はないが、肝炎の抑止、肝硬変や肝癌への進展阻止・遅延化を図る薬物療法。

(7)上記(1)~(6)の「具体的内容」

 ・必要に応じ、上記(1)~(6)の具体的な薬品名や治療法の内容が考慮される(記入上の注意)。

 

8.その他の所見(第13欄8)

(1)「肝移植」の有無、移植年月日及び経過

 ・肝移植の術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分考慮し総合認定される(第13節2(12)ア)。

 ・障害年金受給者が肝移植を受けた場合、術後1年間は従前の等級が維持される(同イ)。

(2)「その他」(超音波・CT・MRI検査等)の所見及び所見年月日

 例1)「コリンエステラーゼ(CHE:cholinesterase)」の所見(第13節2(4)(注))

  ・診断基準の基準値はなく、診療施設基準値の測定方法や単位を踏まえ参考とされる。

  →中等度異常(診療施設基準値に対して、明らかに病的な異常値のもの)。

   低値(肝機能低下の疑い)、高値(脂肪肝等の疑い)。

 

9.合併症

(1)糖尿病を伴う場合

 例)肝性糖尿病等について、糖尿病の欄(第14欄)の記載も考慮される。

 →代謝障害の障害状態要件参照。

(2)腎臓障害を伴う場合

 例)肝性IgA腎症等について、腎疾患の欄(第12欄)の記載も考慮される。

 →腎機能障害の障害状態要件参照。

 

10.一般状態(一般状態区分表)(第11欄)

 ・次の一般状態区分表の区分は、肝疾患に共通する必須の考慮要素である。

 

【一般状態区分表】

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

11.治療及び病状の経過(第9欄)

 ・現在までの治療の内容及び病状の経過等が考慮される(第9欄)。

(1)現在までの治療の内容

(2)治療の期間

(3)病状の経過

 例)食道静脈瘤の治療頻度や治療効果も参考とされ、肝機能障害と併せて考慮される(第13節2(7))。

   なお、食道静脈瘤の治療頻度は、第13欄4(3)の治療回数と合致しているはずである。

(4)診療回数

 ・現症日前1年間における診療回数が考慮される。

 ・入院した場合、入院日数1日は診療回数1回として計算する。

(5)手術歴(手術名及び手術年月日)

(6)その他参考となる事項

 

12.現症時の具体的な日常生活活動能力及び労働能力(第16欄)

 ・現症時の具体的な日常生活活動(ADL)能力及び労働能力は、必ず把握され、考慮される(同欄朱書)。

 ・客観的所見に基づくADL能力及び労働能力は、十分考慮される。

 

13.予後(第17欄)

 ・予後は、必須記載事項として考慮される(同欄朱書)。

  例1)不良:病状の進行の見通し。

  例2)術後予後:肝移植等を施行した場合。

  例3)生命予後:余命記載があるもの。

  例4)不詳:予後が診断時に判断できない場合。

 

14.備考(第18欄)

 ・障害認定時期や等級判定に影響を及ぼしうる特記事項の記入が要求される場合がある。

 

 

【1級】(「肝機能障害」の障害の程度)

<1級相当の肝疾患による肝機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、肝疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第13節1)

 例)次の①及び②に該当するもの(第13節2(6))。

  ① 次の2つのいずれかに該当するもの。

   ⅰ)検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示す。

   ⅱ)検査成績及び臨床所見のうち高度異常を2つ及び中等度異常を2つ以上示す。

  ② 一般状態区分が「オ」に該当する。

 

【2級】(「肝機能障害」の障害の程度)

<2級相当の肝疾患による肝機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、肝疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第13節1)

 例)次の①及び②に該当するもの(第13節2(6))。

  ① 検査成績及び臨床所見のうち中等度異常又は高度異常を3つ以上示す。

  ⓶ 一般状態区分が「エ」又は「ウ」に該当する。

 

【3級】(「肝機能障害」の障害の程度)

<3級相当の肝疾患による肝機能障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第13節1)

 例)次の①及び②に該当するもの(第13節2(6))。

  ① 検査成績及び臨床所見のうち中等度異常又は高度異常を2つ以上示す。

  ⓶ 一般状態区分が「ウ」又は「イ」に該当する。

なお、上記労働の制限の程度が「著しい」ものである場合、障害等級3級12号の認定も有り得ると考える。

その場合、併合判定時にあっては、併合判定参考表3級7号の8で取り扱われることも有り得ることになる。