障害状態要件(循環器機能障害)

11.「循環器機能障害」の障害状態要件

※上記画像と本文の内容は無関係です。

 

【目次】

11-1:「循環器機能障害」の障害状態要件(循環器疾患共通)

11-2:「弁疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

11-3:「心筋疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

11-4:「虚血性心疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

11-5:「難治性不整脈による循環器機能障害」の障害状態要件

11-6:「大動脈疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

11-7:「先天性心疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

11-8:「重症心不全による循環器機能障害」の障害状態要件

 

※「11-1」は、循環器疾患(心血管疾患)で請求する場合に考慮される共通事項です。

※「11-2~8」は、心血管疾患の各病態別に考慮される特定事項です。

 

【注1】以下、根拠条文等について、次のように略記する場合があります。

・「節」は「障害認定基準」、「欄」は「診断書」を指すものとします。

 例1)「認定基準第3第1章第11節」→「第11節」

 例2)「循環器疾患による障害用の診断書(様式120号の6(1))第11欄」→「第11欄」

  ※循環器機能障害の診断書は、前記様式を用います。

  ※複数の障害が併存する重複障害請求する場合、様式の異なる複数の診断書を用いる場合があります。

  →診断書の様式が異なる場合、同種の記載欄の番号が本頁記載のものとは異なる場合があります。

【注2】本頁の例示は、認定基準の例示及び公開情報から推察し構築したものも含む場合があります。

 ※「公開情報」:障害年金の認定に関する専門家会合の議事録等。

 

11-1:「循環器機能障害」の障害状態要件(循環器疾患共通)

■循環器機能障害の原因となった請求傷病による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第11節1)。

 

※「請求傷病」:循環器機能障害の原因傷病(循環器疾患)。心血管疾患及び心血管系の器質的損傷。

 例1)慢性心包炎

 例2)リウマチ性心包炎

 例3)慢性虚血性心疾患

 例4)冠状動脈硬化症

 例5)狭心症

 例6)僧帽弁閉鎖不全症

 例7)大動脈弁狭窄症

 例8)心筋梗塞

※「循環器機能障害」:右心室系の機能障害が主体。左心室系の機能障害も含む。

 ◇右心室系の機能障害に関する症状

  例)動悸、息切れ、肺うっ血による呼吸困難、咳・痰、チアノーゼ等。

 ◇左心室系の機能障害に関する症状

  例)全身倦怠感、浮腫、尿量減少、頸静脈怒張等。

 

●認定対象となる慢性化した循環器疾患(慢性心不全)には、次の10個のパターンが考えられる。

 

1.弁疾患のみ

2.心筋疾患のみ

3.虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)のみ

4.難治性不整脈のみ

5.大動脈疾患のみ

6.先天性心疾患のみ

7.上記1~6以外の心血管疾患のみ

 例1)心膜疾患(収縮性心膜炎、心タンポナーデ等)

 例2)肺動脈性肺高血圧症

8.上記1~7の複数の組合せ

9.上記1~8による重症心不全

10.上記1~9+高血圧症

 

●循環器疾患に係る障害状態要件は、次の事項(共通事項及び特定事項)を考慮して総合的に判断される。

 

Ⅰ.循環器疾患(心血管疾患)による循環器機能障害の診断書における考慮要素(各心血管疾患の共通事項)

1.臨床所見(第11欄4)

(1)自覚症状:各心血管疾患又は高血圧症に基づくもの。他覚所見との連動性が確認される(第11節2(3))。

 ①「動悸」(無・有・著)

  ※「動悸」:安静時脈拍数120回/分超の状態。

  例)脈が飛ぶ、脈が乱れる等。

 ②「呼吸困難」(無・有・著)

 ③「息切れ」(無・有・著)

 ④「胸痛」(無・有・著)

  例)急性冠症候群による胸痛:重苦しい、圧迫される、締め付けられる、息が詰まる、焼けるような不快感等。

 ⑤「咳」(無・有・著)

 ⑥「痰」(無・有・著)

 ⑦「失神」(無・有)

  例)発作性洞停止によるもの。

(2)他覚所見(臨床症状)

 ①「チアノーゼ」(無・有・著)

 ②「浮腫」(無・有・著)

 ③「頸静脈怒張」(無・有)

 ④「ばち状指」(無・有)

 ⑤「尿量減少」(無・有)

 ⑥「器質的雑音」(無・有)及び「Levine度」

  ※「Levine度」:Levine分類(心雑音の強度分類)による強度。Ⅲ度以上の器質的雑音は考慮される。

 

【Levine分類(レバイン分類)】

心雑音の強度分類 心雑音の強度内容 振戦の触知
Levine Ⅰ度
(非常に弱い)
微弱で、注意深い聴診で聴こえる。 ×
Levine Ⅱ度
(弱い)
弱いが、聴診器を当てれば即座に聴こえる。 ×
Levine Ⅲ度
(中等度)
明瞭に聴こえる。振戦は触知できない。 ×
Levine Ⅳ度
(強い)
明瞭に聴こえる。振戦を触知できる。
Levine Ⅴ度
(非常に強い)
聴診器の端を胸壁に当てるだけで聴こえる。
Levine Ⅵ度
(遠隔雑音)
聴診器を胸壁に近づけるだけで聴こえる。

 ※「振戦の触知」:LevineⅣ度以上になると、心雑音による振動(スリル)が手で触っても分かる状態となる。

 

(3)NYHA心機能分類(第11欄3)

 ・NYHA(ニューヨーク心臓協会)による心機能分類(心不全の重症度)のうち、該当するものが考慮される。

 

【NYHA心機能分類(ニーハ分類)】

心機能分類
(重症度)
心不全の症状及び身体活動の制限の程度
NYHA Ⅰ度
(軽度)
・心疾患はあるが身体活動に制限はない。
・日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。
NYHA Ⅱ度
(軽度)
・軽度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。
・日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
NYHA Ⅲ度
(中等度)
・高度な身体活動の制限がある。安静時には無症状。
・日常的な身体活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
NYHA Ⅳ度
(重度)
・心疾患のためいかなる身体活動も制限される。
・心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する。わずかな労作でこれらの症状は増悪する。

 

2.検査所見(第11欄4)

(1)心電図所見

 ・各種心電図所見のあるものは、当該心電図写しと併せて考慮される。

 ①「安静時心電図」の有無

  ・安静時心電図がある場合、後述する主な10種類の異常検査所見の有無が考慮される(第11節2(7))。

  ・重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見は、異常検査所見「E」に区分される。

   ※「重症な」:頻度や程度が著明な場合と考える。

   ※「頻脈性」:安静時脈拍数100回以上/分。

    例)洞性頻脈、上室性頻拍、頻脈性心房細動・心房粗動、接合部頻拍、心室頻拍等。

   ※「徐脈性」:安静時脈拍数50回以下/分。

    例)房室ブロック、洞房ブロック、洞性徐脈等。

  ・なお、脈拍数≒心拍数≒心房拍数≒心室拍数。正常であれば全て一致するが、病態により必ずしも一致しない。 

  ⅰ)「心室性期外収縮」の有無

   ※「心室性期外収縮(PVC:premature ventricular contraction)」:正常よりも心室が早く収縮するもの。

   ・心室性期外収縮「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

  ⅱ)「心房細動・粗動」の有無

   ・心房細動のみは認定対象外(第11節2(9)④(注2))。

   ・心房細動に心不全が合併したり、ペースメーカーを装着した場合には認定対象として考慮される(同前)。

   ・心房粗動も心房細動と同様に取り扱われると考える。加齢に伴い漸増する一般的性質は同じだからである。

   ・心房細動・粗動「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

   ※「心房細動(af:atrial fibrillation)」:心房で無秩序な興奮(心房拍数350回以上/分)が発生する。

    ・P波がみられず、基線の動揺波形(f波:350~600回/分)がみられる。RR間隔は不規則。

   ※「心房粗動(AF:atrial flutter)」:心房で無秩序な興奮(心房拍数250~350回/分)が発生する。

    ・正常P波がみられず、のこぎり状の規則的な粗動波(F波:250~350回/分)がみられる。

  ⅲ)「完全左脚ブロック」の有無

   ※「完全左脚ブロック(LBBB:Left complete bundle branch block)」:QRS幅が0.12秒以上のもの。

   ・完全左脚ブロック「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

    例)虚血性心疾患や心筋症を伴う完全左脚ブロックは、「重症」なものに該当するものと考えられる。

  ⅳ)「陳旧性心筋梗塞」の有無

   ※「陳旧性心筋梗塞(OMI:old myocardial infarction)」:心筋壊死から1か月以上経過した心筋線維化。

   ・陳旧性心筋梗塞「有」かつ「今日まで狭心症状を有するもの」は、異常検査所見「I」に区分される。

    ※「狭心症状」:胸痛や胸部圧迫感が著しい(頻発している)場合。

  ⅵ)「完全房室ブロック」の有無

   ※「完全房室ブロック」:心房の興奮が心室へ全く伝導しない状態(第Ⅲ度)。

   ・P波とQRS波が無関係にリズムを刻む(房室解離)。突然死する可能性が高い。

   ・完全房室ブロック「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

  ⅶ)「MobitzⅡ型房室ブロック」の有無

   ※「MobitzⅡ型房室ブロック」:心房の興奮が心室へ突然伝導しない場合がある状態(第Ⅱ度)。

   ・PR時間は徐々に延長せず常に一定であるが、突然QRS波が脱落する。

   ・MobitzⅡ型房室ブロック「有」かつ「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

  ⅷ)「0.2mV以上のST低下」の有無

   ※「ST」:STセグメント(QRS波の終り(J点)からT波の始めまでの直線状の部分)。ST部分ともいう。

   ※「ST低下」:基線上に一致するべきSTが、基線以下に低下した状態。

   ・ST低下の形態には、上行型、水平型、下行型、盆状型等がある。

   ・主に心筋虚血を疑う。冠動脈狭窄ではST低下(虚血)、冠動脈閉塞はST上昇(貫壁性虚血)がみられる。

   ・0.2mV以上のST低下「有」は、異常検査所見「A」に区分される。

  ⅸ)「深い陰性T波」の有無(mV値)

   ※「深い陰性T波」:0.5mV以上の陰性T波(正常は山型のT波が谷型のもの)。

   ・深い陰性T波「有」(aVR誘導を除く。)は、異常検査所見「A」に区分される。

    ※「aVR誘導を除く」: aVR誘導(右室誘導)の波形は、左室誘導の波形と高低が逆だからである。

 

【標準12誘導心電図】

誘導名 誘導方法 電極の装着部位と色 心臓を見る方向と部位 波形方向
I 双極肢誘導 左手首(+)【黄】
右手首(-)【赤】
前額面(垂直面)上の左肩から
左室高位側壁を見る。
双極肢誘導 左足首(+)【緑】
右手首(-)【赤】
前額面(垂直面)上の左下から
心尖部と左室下壁を見る。
双極肢誘導 左足首(+)【緑】
左手首(-)【黄】
前額面(垂直面)上のほぼ真下から
右室側面と左室下壁を見る。
aVR 単極肢誘導 右手首(+)【赤】 前額面(垂直面)上の右肩から
右房や右室の一部を見る。

(逆)
aVL 単極肢誘導 左手首(+)【黄】 前額面(垂直面)上の左肩から
左室高位側壁を見る。
aVF 単極肢誘導 左足首(+)【緑】 前額面(垂直面)上のほぼ真下から
左室下壁を見る。
V1 単極胸部誘導 第4肋間胸骨右縁
(+)【赤】
水平面上の主に右室側から
心室中隔を見る。
V2 単極胸部誘導 第4肋間胸骨左縁
(+)【黄】
水平面上の右室前壁と心室中隔側から
心室中隔を見る。
V3 単極胸部誘導 V2とV4の結合線の中点
(+)【緑】
水平面上の心室中隔と左室前壁側から
左室前壁を見る。
V4 単極胸部誘導 左鎖骨中線と第5肋間を
横切る水平線との交点
(+)【茶】
水平面上の左室前壁側から
左室前壁を見る。
V5 単極胸部誘導 V4の高さの水平線と
左前腋窩線との交点
(+)【黒】
水平面上の左室前壁と左室側壁側から
左室側壁を見る。
V6 単極胸部誘導 V4の高さの水平線と
左中腋窩線との交点
(+)【紫】
水平面上の左室側壁側から
左室側壁を見る。

       

  ⅹ)「その他」の安静時心電図所見

   例1)洞性頻脈:脈(波形)は正常で規則的だが速いもの(脈拍数:100回/分以上)。洞結節の異常を示す。

    ・洞性頻脈で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

   例2)洞性徐脈:脈(波形)は正常で規則的だが遅いもの(脈拍数:50回/分以下)。洞結節の異常を示す。

    ・洞性徐脈で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

   例3)心房性期外収縮:正常よりも心房が早く収縮するもの。

    ・心房性期外収縮で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

   例4)発作性上室性頻拍(PSVT:Paroxysmal SupraVentricular Tachycardia)

    ・心拍数120~240回/分の規則的な頻拍。突然起こり、突然停止する。上室異常による。

     ※「上室」:心室より上側の組織。心房や房室接合部付近。右心房、洞結節、結節間路、房室結節等。

    ・発作性上室性頻拍で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

    例4-1)房室結節回帰性頻拍(AVNRT:atrioventricular nodal reentrant tachycardia)

    例4-2)房室回帰性頻拍(AVRT:atrioventricular reentrant tachycardia、WPW症候群)

    例4-3)洞結節回帰性頻拍(SANRT:sinoatrial nodal reentrant tachycardia)

    例4-4)心房頻拍(AT:atrial tachycardia)

   例5)心室頻拍:心室拍数100~200回/分。心室異常による期外収縮の頻発。

    ・心室頻拍で「重症」なものは、異常検査所見「E」に区分される。

     例)トルサード・ド・ポアンツ(一過性心室細動):心室頻拍の特殊型。

      ・QT延長時に起こり易く、突然死を起す場合がある。

   例6)心室細動・粗動

    ・心室細動・粗動は、重症な頻脈性不整脈所見といえるため、異常検査所見「E」に区分される。

    ・心室細動は心室拍数300回/分以上、心室粗動は心室拍数250~300回/分となる心臓の痙攣状態。

    ・いずれも事実上の心停止状態のため、電気的除細動等の実施歴や重症を示す他の記載も併せて重視される。

 ② 負荷心電図の有無等

  ・負荷心電図がある場合、次の2つの事項が考慮される。

  ⅰ)陰性・疑陽性・陽性の別

  ⅱ)Mets(メッツ):Metabolic equivalentsの略。代謝当量(安静臥位時の代謝量を基準とした運動強度)。

   ・安静臥位時の代謝量、換言すれば、安静時の酸素摂取量(3.5ml/kg体重/分)を1Metsとする。

   ・安静時の何倍の酸素摂取量が要求される運動強度の身体活動(負荷)に耐え得る能力をもつのかをみる。

    例)普通に歩くことは3Mets相当、近所の散歩は2.5Mets相当の負荷がかかる(目安)。

  ・負荷心電図(6METs未満相当)等で明らかな心筋虚血所見がある場合、異常検査所見「B」に区分される。

 

【「Mets」と一般状態「区分」の対応関係】

・身体活動能力の指標「Mets」と一般状態「区分」とは、概ね次の表における対応関係がある。

身体活動能力 区分 一般状態
6METs 以上 ・無症状である。
・社会活動ができ、制限を受けることがない。
・発病前と同等にふるまえる。
4METs 以上6METs 未満 ・軽度の症状がある。
・肉体労働は制限を受ける。
・歩行、軽労働や座業(軽い家事、事務等)はできる。  
3METs 以上 4METs 未満 ・歩行や身の回りのことはできる。
・時に少し介助が必要なことがある。
・軽労働はできない。
・日中の50%以上は起居している。
2METs 以上 3METs 未満 ・身の回りのある程度のことはできる。
・しばしば介助が必要である。
・日中の50%以上は就床している。
・自力では屋外への外出等が殆どできない。
2METs 未満 ・身の回りのことはできない。
・常に介助を必要である。
・終日就床を強いられる。
・活動の範囲が概ねベッド周辺に限られる。

 

 ③ ホルター心電図の有無

  ・ホルター心電図がある場合、当該心電図の写し及び所見が考慮される。

  ※「ホルター心電図」:24時間機器を装着し日常生活において記録する心電図。所見では解析ソフトを用いる。

(2)胸部X線所見

 ①「心胸郭係数」(単位%)

  ・胸部X線上で心胸郭係数60%以上の場合、異常検査所見「C」に区分される。

 ②「肺静脈うっ血」の有無等(著しい程度の場合、その旨)

  ・肺静脈うっ血が「有」(明らかな所見)の場合、異常検査所見「C」に区分される。

   ※「肺静脈うっ血」:肺静脈内の血液量が増加し血流が滞っている状態。

  ・肺静脈うっ血が「著」(間質性肺水腫)の場合、異常検査所見「C」に区分される。

   ※「間質性肺水腫」:肺静脈うっ血が悪化し、血管外へ血液成分が漏出し間質に溜まった状態。

(3)動脈血ガス分析値(現症日の直近の結果)

 ①「動脈血酸素分圧」(単位Torr)

 ②「動脈血炭酸ガス分圧」(単位Torr)

(4)心カテーテル検査(現症日の直近の結果)

 ①「左室駆出率(EF:left ventricular ejection fraction)」(単位%)

  ※左室駆出率(EF)=(拡張末期容積-収縮末期容積)÷ 拡張末期容積 × 100

   →正常は50%~80%。40%以下のものは、異常検査所見「F」に区分される(第11節2(7))。

 ②「冠動脈れん縮誘発試験」の有無(陰性又は陽性の別)

 ③「左主幹部に50%以上の狭窄」の有無

  ・左主幹部に50%以上の狭窄が有るものは、異常検査所見「H」に区分される(第11節2(7))。

 ④「3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄」の有無

  ・3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄が有るものは、異常検査所見「H」に区分される(第11節2(7))。

   ※「3本の主要冠動脈」:右冠動脈並びに左冠動脈の前下行枝及び回旋枝。

 ⑤「心カテーテル検査所見」

(5)心エコー検査(現症日の直近の結果)

 ①「左室拡張期径」及び「左室収縮期径」(いずれも単位mm)

  ・中等度以上の左室拡大(拡張末期・収縮末期の左室内径の拡大状態)は、異常検査所見「D」に区分される。

   ※「拡張末期」:僧帽弁及び三尖弁は開いており、大動脈弁及び肺動脈弁は閉じているとき。

   ※「収縮末期」:僧帽弁及び三尖弁は閉じており、大動脈弁及び肺動脈弁は開いているとき。

 ②「左室駆出率(EF値)」(単位%)

 ③「心エコー検査所見」

  例1)左室肥大:左室後壁厚の肥厚状態。

   ・中等度以上の左室肥大は、異常検査所見「D」に区分される。

  例2)弁膜症(弁疾患)

   ・弁膜症(心臓の弁の狭窄又は閉鎖不全)は、異常検査所見「D」に区分される。

    ※「心臓の弁」:①房室弁(僧帽弁と三尖弁)、⓶動脈弁(大動脈弁と肺動脈弁)がある。

   例2-1)大動脈弁狭窄症

   例2-2)大動脈弁閉鎖不全症

   例2-3)僧帽弁閉鎖不全症

   例2-4)三尖弁閉鎖不全症

  例3)収縮能の低下(収縮機能不全):左室収縮性が低下した心不全。

   ・収縮能の低下は、異常検査所見「D」に区分される。

  例4)拡張能の制限(拡張機能不全):左室収縮性が保持された心不全。

   ・拡張能の制限は、異常検査所見「D」に区分される。

  例5)推定肺動脈圧 

(6)血液検査(現症日の直近の結果)

 ・循環器疾患の血液検査では、次のいずれか一つの検査値を得れば足り、それが考慮される。

 ①「BNP値(脳性ナトリウム利尿ペプチド)」(単位pg/mL)

  ・BNP値が200pg/mL相当を超えるものは、異常検査所見「G」に区分される。

 ②「NT-proBNP値(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)」(単位pg/mL)

 

【BNP値とNT-proBNP値の取扱いの差異(閾値)の考察】

BNP値でいう「200pg/mL相当」(異常検査所見「G」に区分されるもの)とは、NT-proBNP値でいうどの程度の数値(閾値)なのか、認定基準では明らかでないため問題となる。BNP値の症例データは豊富だがNT-proBNP値では少ないこと(個体差や測定技術面によるばらつきや誤差等)に起因するものと考えられる。

日本心不全学会によれば「BNP>200pg/mL」は「NT-proBNP>900pg/mL」と同程度(「治療対象となる心不全の可能性が高いので精査あるいは専門医へ紹介」が必要な程度)と判断しているため、「NT-proBNP>900pg/mL」であれば、異常検査所見「G」に区分されるものに匹敵するとみてよいであろう。 

 

【BNP値とNT-proBNP値の用語の解説】

・いずれの数値も左室機能不全の重症度を心筋細胞が分泌するホルモンの血中濃度から判定する指標である。

・いずれも重症になるほど数値は高くなる。高値の場合、心不全や心筋梗塞のほか、高血圧、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症等が疑われる。

・加齢、腎機能低下、呼吸器疾患等により高くなる影響を受けていないか(過大評価)、また、脱水状態、利尿薬、肥満等により低くなる影響を受けていないか(過小評価)に留意する必要がある。

※「proBNP」:BNPの前駆体。

 ・主に左心室の心筋細胞から分泌される。

 ・108個のアミノ酸[1-108]で構成される蛋白質ホルモン。

 ・心筋細胞への負荷が大きくなるほどproBNPの合成が亢進する(分泌量が増える)。

 ・生理活性なし。

 ・proBNPが蛋白分解酵素によりNT-proBNP[1-76]とBNP[77-108]に切断され、

  それぞれ循環血液中に放出される。

※「NT-proBNP」:proBNP由来の蛋白質ホルモンの血中濃度。

 ・主に左心室の心筋細胞から産生される。

 ・N端から76個のアミノ酸[1-76]から成る。

 ・生理活性なし。

 ・血中半減期は約120分(血中安定性はBNPに比べて高い)。

※「BNP」:proBNP由来のペプチドホルモンの血中濃度。

 ・主に左心室の心筋細胞から産生される。

 ・32個のアミノ酸[77-108]から成る。

 ・生理活性(血管拡張作用やNa利尿作用等)がある。

 ・血中半減期は約20分(血中安定性はNT-proBNPに比べて低い)。

 

3.その他の所見(第11欄5)

 <自覚症状(その他)>

  例1)強い眩暈(めまい):意識が遠くなりふらつき立っていられない等。

  例2)冷汗:【連動】急性冠症候群。

 <他覚所見(その他)>

  例3)肝腫大:肝容積の異常な増大。肋弓下に肝下縁を2cm以上触知する場合等。【連動】右心不全。

 <検査所見(その他)>

  例4)冠動脈造影所見:病変枝数(1枝病変、多枝病変)、複雑病変(偏心性病変、壁不整病変)等。

 

4.一般状態(一般状態区分表)(第11欄2)

 ・次の一般状態区分表の区分は、循環器疾患に共通する必須の考慮要素である。

 

【一般状態区分表】

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

5.治療及び病状の経過(第9欄)

 ・現在までの治療内容及び病状の経過等が考慮される(第9欄)。

(1)現在までの治療の内容

(2)治療の期間

(3)病状の経過

(4)診療回数

 ・現症日前1年間における診療回数が考慮される。

 ・入院した場合、入院日数1日は診療回数1回として計算する。 

(5)手術歴(手術名及び手術年月日)

(6)その他参考となる事項

 

6.現症時の具体的な日常生活活動能力及び労働能力(第13欄)

 ・現症時の具体的な日常生活活動(ADL)能力及び労働能力は、必ず把握され、考慮される(同欄朱書)。

 ・客観的所見に基づくADL能力及び労働能力は、十分考慮される。

 

7.予後(第14欄)

 ・予後は、必須記載事項として考慮される(同欄朱書)。

  例1)不良:病状の進行の見通し。

  例2)術後予後:心臓移植の施行や心臓再同期医療機器を装着した場合。

  例3)生命予後:余命記載があるもの。

  例4)不詳:予後が診断時に判断できない場合。

 

8.備考(第15欄)

 ・障害認定時期や等級判定に影響を及ぼしうる特記事項の記入が要求される場合がある。

 <重症心不全に該当しない者が、CRT又はCRT-Dを装着した場合>

  ※「CRT」:心臓再同期医療機器。

  ※「CRT-D」:除細動器機能付き心臓再同期医療機器。

  →装着日及び装着した医療機器の別(CRT又はCRT-D)。

   例)「平成○年○月○日、CRT装着」。

 

Ⅱ.循環器疾患(心血管疾患)による循環器機能障害の診断書における考慮要素(該当する疾患に関する特定事項)

 ・現症日における疾患別所見は、次の1から8までの一つ以上(高血圧症の場合、二つ以上)が要求される。

 ・なお、各該当する疾患に係る所見日は現症日と通常一致する(ように診断書作成を依頼する)が、治療日(手術日等)と現症日とは通常一致しない。また、特例的取扱いにより障害認定時期が現症日と一致するとは限らない。

 ・障害認定時期となりうる治療日(初診日から起算して1年6月以内の日に限る。)は、必ず着目される。

 

【循環器疾患に係る障害認定時期となりうる治療日】

 ・循環器疾患の治療日(手術適応を示すもの。診断書裏面の黒色太字の年月日)は、重視される。

 ※「治療日」:手術日、施行日、装着日、挿入日、留置日、置換日、移植日、植込日等、多様な表現がある。

  例1)ペースメーカーの装着日(植込日)

  例2)植込み型除細動器(ICD)の装着日(植込日)

  例3)人工血管の置換日(置換術の施行日)

  例4)ステントグラフトの置換日(置換術の施行日)又は挿入日(内挿術の施行日)

  例5)人工弁の置換日(置換術の施行日)

  例6)心臓移植の施行日(移植日)

  例7)人工心臓の装着日(植込日)

  例8)心臓再同期医療機器(CRT)の装着日(植込日)

  例9)除細動器機能付き心臓再同期医療機器(CRT-D)の装着日(植込日)

 

1.心筋疾患(第12欄1)

(1)「肥大型心筋症(HCM)」の有無

(2)「拡張型心筋症(DCM)」の有無

(3)「その他の心筋症」の有無

 例1)拘束型心筋症(RCM)

 例2)不整脈原性右室心筋症(ARVC)

 例3)炎症性心筋症(心筋炎等)

 例4)代謝性心筋症(心Fabry病等)

 例5)ミトコンドリア心筋症

 例6)ストレス誘発性心筋症(たこつぼ心筋症) 

(4)「該当する心筋症」の所見

 ・上記(1)から(3)までの該当する心筋症の所見が考慮される。

 

2.虚血性心疾患(第12欄2)

(1)「心不全症状」の有無等

 ・心不全症状がある場合、「軽労作で有」又は「安静時有」のうち、該当するものが考慮される。

(2)「狭心症状」の有無等

 ・狭心症状がある場合、「軽労作で有」又は「安静時有」のうち、該当するものが考慮される。

(3)「梗塞後狭心症状」の有無等

 ・梗塞後狭心症状がある場合、「軽労作で有」又は「安静時有」のうち、該当するものが考慮される。

(4)「心室性期外収縮」の有無等

 ・心室性期外収縮(PVC:premature ventricular contraction)がある場合、Lown度(ローン度)も考慮される。

  ※「心室性期外収縮」:基本の心周期より早く心室から出現した興奮。24時間心電図では皆無は健常者でも稀。

  ※「Lown度」:Lown分類(7段階評価)による判定結果(重症度)。

  ※「Lown分類」:不整脈の一つである心室性期外収縮(PVC)の重症度分類。

 

【Lown分類(ローン分類)】

期外収縮の重症度 心電図所見
Grade 0 期外収縮(PCV)なし
Grade 1 散発性(1個/分又は30個/時以内)
Grade 2 散発性(1個/分又は30個/時以上)
Grade 3 多形性(期外収縮波形の種類が複数あるもの)
Grade 4a 連発性(2連発)
Grade 4b 連発性(3連発以上)
Grade 5 R on T(T波に重なるようにPVCが出現するもの。心室頻拍や心室細動を誘発し易い。)

 

(5)「インターベンション」の有無等

  ※「インターベンション」:内科的治療(薬物療法)と外科的治療(手術)の間に位置する心臓カテーテル治療。

   冠動脈インターベンション(PCI)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、風船治療(BA)とも呼ばれる。

   治療に薬剤投与を伴う場合(ステント血栓症(ST)防止のため一定期間薬を服用する場合等)もある。

 ・インターベンションを受けた場合、次の三つの事項が考慮される。

 ①「初回施行日」

 ②「回数」

 ③「手技の内容」

  例1)風船治療(冠動脈バルーン形成術)

   ・冠動脈内に狭窄部位を拡げるバルーンカテーテル(先端に風船を装着した細い管)を挿入後、抜き取る。

  例2)ステント治療(冠動脈ステント留置術)

   ・冠動脈内に狭窄部位を拡げるステント(網目様状の金属製の細い筒)を留置する。

   例2‐1)ベアメタルステント(BMS:Bare-metal stent):薬剤塗布なしのステントを用いる。

   例2‐2)薬物溶出型ステント(DES:Drug-eluting stent):薬剤塗布ありのステントを用いる。

(6)「ACバイパス術」の有無等

 ・ACバイパス術を受けた場合、その施行日が考慮される。

(7)「再狭窄」の有無等

 ・再狭窄がある場合、その「発生日」も考慮される。

  <再狭窄の発生日の目安>

  ・風船治療の場合:治療後3ヶ月以内。

  ・ステント治療(BMS:ベアメタルステント)の場合:治療後6ヶ月以内。

  ・ステント治療(DES:薬物溶出型ステント)の場合:塗布された薬効次第。BMSの場合に比べ延びうる。

(8)「その他の手術」の有無等

 ・上記(1)から(7)までに記載がない手術を受けた場合、その「手術名」及び「施行日」も考慮される。

(9)その他の虚血性疾患の所見や治療方法

 ・上記(1)から(8)以外の虚血性疾患の所見や治療方法も考慮される。 

 

3.不整脈(第12欄3)

(1)「難治性不整脈」の有無

(2)「ペースメーカー治療」の有無等

 ・ペースメーカー治療を受けた場合、その「装着日」も重要な考慮要素となる。

(3)「植込み型除細動器(ICD)」の有無等

 ・植込み型除細動器(ICD)を植え込んでいる場合、その「植込日」も重要な考慮要素となる。

(4)その他の不整脈の所見や治療方法

 ・上記(1)から(3)以外の不整脈の所見や治療方法についても、考慮要素となる。

 

4.大動脈疾患(第12欄4)

(1)「胸部大動脈解離」の有無等

 ・現症日において胸部大動脈解離が認められる場合、次の2つの事項も考慮される。

 ①「Stanford分類(スタンフォード分類)」:大動脈解離を発生部位から2つ(A型・B型)に分類したもの。

 ②「現症日」

 

【Stanford分類(スタンフォード分類)】

大動脈解離の分類 解離の部位(進展範囲)及び治療の特徴
Stanford A型 上行大動脈に解離があるもの。すなわち、上行大動脈(及び下行大動脈)に解離(偽腔)があるもの。心筋梗塞、心タンポナーデや脳への血流障害を起こし易く、多くは手術となる。
Stanford B型 上行大動脈まで解離が及んでおらず、下行大動脈のみに解離(偽腔)があるもの。血圧管理や疼痛除去等の内科的治療が主となる。切迫破裂の兆候があれば手術となりうる。

 ※「大動脈解離」:大動脈壁が中膜で二層に剥離し、動脈走行に沿って二腔(真腔と偽腔)が生じた病態。

 ※「二腔」:剥離した隔壁(フラップ)により本来の動脈内腔(真腔)と新たに生じた壁内腔(偽腔)から成る。

 

(2)「大動脈瘤」の有無等

 ・現症日において大動脈瘤がある場合、次の3つの事項も考慮される。

  ※「大動脈瘤」:大動脈壁一部の全周又は局所が嚢状又は紡錘状に拡張した状態。

   ・大動脈瘤の原因には、動脈硬化(アテローム硬化)、先天性大動脈疾患や膠原病等がある。

   ・大動脈瘤のみは認定対象外である(第11節2(9)⑤(注2))。

   ・大動脈瘤「有」かつ原疾患の活動性や術後合併症も見られる場合、総合的に考慮される(同前)。

 ①「病変部位」:大動脈瘤がある部位(胸部・胸腹部・腹部の別)。

 ②「最大血管短径」:動脈瘤のある部位を数スライス計測した中で最大の短径(単位cm)。

  ※「短径」:スライスした楕円状の直径には長径と短径がある。瘤径の評価で直径とは、短径の意である。

  →正常径(直径3cm程度)、大動脈瘤(直径4.5cm超の場合又は壁の一部に局所的瘤状変化がある場合)。

 ③「現症日」

(3)「人工血管」の有無等

 ・現症日までに人工血管に置換した場合、次の二つの事項も考慮される。

 ①「置換部位」:人工血管を置換した部位(胸部・胸腹部・腹部の別)。 

 ②「置換日」:人工血管の置換日

(4)「ステントグラフト」の有無等

 ・現症日までにステントグラフト(金属製特殊人工血管)に置換した場合、次の2つの事項も考慮される。

 ①「置換部位」:ステントグラフトに置換した部位(胸部・胸腹部・腹部の別)。

 ②「置換日」:ステントグラフトの置換日。

(5)「その他の手術」の有無等

 ・上記(1)から(4)までのうち記載がない手術を受けた場合、その「手術名」及び「施行日」も考慮される。

(6)「その他」

 ・上記(1)から(5)以外の大動脈疾患の所見や治療方法についても、考慮される。

  例1)大動脈瘤の合併症(破裂、心タンポナーゼ、大動脈の主要分岐閉塞による臓器虚血)の所見

 

5.先天性心疾患・弁疾患(第12欄5)

(1)先天性心疾患の場合

 ・先天性疾患は、異常検査所見「D」に区分される(第11節2(7))。

 ・先天性心疾患については、次の2つの事項が考慮される。

 ①「症状の出現時期」(出現日)

 ②「小・中学生時代の体育の授業」が「普通にできた」か「静観していた」か。

(2)弁疾患の場合

 ・弁疾患(弁膜症)は、狭窄症、閉鎖不全症、狭窄症兼閉鎖不全症(連合弁膜症)に分けられる。

  ※「狭窄症」:弁が癒合し十分に開かないため、弁が開く時に血流が妨げられるもの。

  ※「閉鎖不全症」:弁が完全に閉じないため、弁が閉じる時に逆流を起こすもの。

  ※「連合弁膜症」:狭窄症と閉鎖不全症が合併したもの(例:僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症等)。

 ◇僧帽弁が機能不全のもの

  例1)僧帽弁狭窄症(MS:mitral valve stenosis)

  例2)僧帽弁閉鎖不全症(MA:mitral valve atresia)

 ◇三尖弁が機能不全のもの

  例1)三尖弁狭窄症(TS:tricuspid valve stenosis)

  例2)三尖弁閉鎖不全症(TA:tricuspid valve atresia)

 ◇大動脈弁が機能不全のもの

  例1)大動脈(弁)狭窄症(AS:aortic valve stenosis)

  例2)大動脈(弁)閉鎖不全症(AR:aortic regurgitation, AI:aortic incompetence)

 ◇肺動脈弁が機能不全のもの

  例1)肺動脈(弁)狭窄症(PS:pulmonary valve stenosis)

  例2)肺動脈(弁)閉鎖不全症(PA:pulmonary valve atresia)

 ・弁疾患については、次の二つの事項が考慮される。

 ①「原因疾患」:弁疾患を来す原発性疾患。

  例1)冠動脈疾患:主要冠動脈に少なくとも1ヶ所の有意狭窄をもつ、或は冠攣縮が証明されたもの。

   例1-1)冠動脈硬化症:冠動脈の硬化→弁の硬化(大動脈弁狭窄症等)。

   例1-2)虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞):冠動脈の硬化→心拡大→弁接合不全(弁閉鎖不全)。

  例2)リウマチ熱:リウマチ熱の後遺症(弁の硬化等)→弁膜症(リウマチ性僧帽弁狭窄症等)。

  例3)感染性疾患(感染性心内膜炎、血管炎等):弁の穿孔等の炎症性破壊→弁膜症。

   例3-1)薬物治療(ステロイド治療等)による免疫機能低下→感染性心内膜炎→弁膜症。

   例3-2)非薬物治療(放射線術後、人工透析、抜歯、内視鏡による細胞診等)→感染性心内膜炎→弁膜症。

   例3-3)外傷による細菌感染→感染性心内膜炎→弁膜症。

  例4)カルチノイド症候群:腫瘍による心内膜の硬化→弁膜症(肺動脈弁狭窄症、三尖弁閉鎖不全症等)

  例5)腱索断裂(僧帽弁腱索断裂症等):腱索断裂→弁膜症(僧帽弁閉塞不全症等)。   

  例6)弁尖逸脱(僧帽弁逸脱症等):弁尖逸脱(変形)→弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧房弁閉塞不全症等)。

  例7)先天性異常

   例7-1)先天性心疾患(エプスタイン奇形等)→弁膜症(三尖弁狭窄症、三尖弁閉鎖不全症等)。

   例7-2)先天性全身性疾患(マルファン症候群等):大動脈拡張等→弁膜症(大動脈弁閉鎖不全症等)。

 ②「発病時期」(発病年月日)

(3)「Eisenmenger(アイゼンメンゲル)症候群」の有無

 ※「Eisenmenger(アイゼンメンゲル)症候群」:先天性心疾患等を原発とする二次性肺高血圧症。

  ・右左シャントによるチアノーゼが生じる。原疾患への手術禁忌。完治には心肺同時移植が必要とされる。

(4)「肺体血流比(Qp/Qs)」:体全体(systemic)に対する肺(plumonary)の血流量(blood flow)の比率。

(5)「肺動脈収縮期圧」(単位mmHg)

(6)「人工弁置換術」の有無等

 ・人工弁置換術の具体的な「手術名」及び「施行日」も考慮される。

(7)「その他の手術」の有無等

 ・上記(1)から(6)までのうち記載がない手術の具体的な「手術名」及び「施行日」も考慮される。

(8)「その他」

 ・上記(1)から(7)以外の先天性心疾患又は弁疾患の所見や治療方法についても、考慮される。

 

6.重症心不全(第12欄6)

 ※「重症心不全」:心機能の低下が極めて高度で、通常の心不全治療を十分に行っても回復困難な状態。

 ・虚血性心疾患、弁膜症、先天性心疾患、心筋炎、特発性心筋症等を原因として生ずるに至ったもの。

 ・重症心不全については、術後当初は障害等級2級以上が検討されるため、次の該当する事項が考慮される。

(1)「心臓移植」の有無等

 ・心臓移植をした場合、術の施行日も考慮される。

(2)「人工心臓」の有無等

 ・人工心臓を装着した(又は植え込んだ)場合、当該装着術(又は植込術)の施行日も考慮される。

  ※「人工心臓」:補助人工心臓(VAS:Ventricular Assist System) 。

   ・血液ポンプを体外に設置する体外設置型と、体内に埋め込む体内設置型がある。

(3)「心臓再同期医療機器(CRT)」の有無等

 ・心臓再同期医療機器(CRT)を装着した場合、その装着日(植込日)も考慮される。

(4)「除細動器機能付き心臓再同期医療機器(CRT-D)」の有無等

 ・除細動器機能付き心臓再同期医療機器(CRT-D)を装着した場合、その装着日(植込日)も考慮される。

 

7.高血圧症(第12欄7)

 ・大動脈疾患(第12欄4)に記載があり、かつ高血圧症がある場合、高血圧症(同欄7)の記載も要求される。

 ・単に高血圧のみでは認定対象外だが、眼底に変化が現れた場合や臓器に合併症を伴う場合は認定対象となりうる。

 →疾患別所見(第12欄1~8)のうち高血圧症(同欄7)のみでも、その記載内容次第で認定対象となりうる。 

 →「高血圧症による障害」の障害状態要件(高血圧症に係る特定事項)参照。

 

8.その他の循環器疾患(第12欄8)

 例1)心膜疾患:急性心膜炎等。

 

【1級】(「循環器機能障害(循環器疾患共通)」の障害の程度)

<1級相当の循環器疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、当該疾病の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第11節1)

 →具体例につき、後述の各病態別(11-2~8)参照。

 

【2級】(「循環器機能障害(循環器疾患共通)」の障害の程度)

<2級相当の循環器疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、当該疾病の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第11節1)

 →具体例につき、後述の各病態別(11-2~8)参照。

 

【3級】(「循環器機能障害(循環器疾患共通)」の障害の程度)

※「循環器機能障害」については、3級12号及び障害手当金の認定はない(認定基準第3第1章第11節1)。

 

<経過観察に付される3級相当の循環器疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第11節1)

 →具体例につき、後述の各病態別(11-2~8)参照。

 

 

11-2:「弁疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

■循環器機能障害の原因となった請求傷病(弁疾患)による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第11節1)。

 

【1級】(「弁疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

<1級相当の弁疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、弁疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第11節1)

 例)次の2つ両方に該当するもの(第11節2(9)①)。

  ① 病状(障害)が重篤で安静時でも心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)がある。

  ② 一般状態区分が「オ」に該当する。

 

【2級】(「弁疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

<2級相当の弁疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、弁疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)次の4つ全てに該当するもの(第11節2(9)①)。

  ① 人工弁を装着術後、6ヶ月以上経過している。

  ② 病状を表わす臨床所見が5つ以上ある。

  ③ 異常検査所見が1つ以上ある。

  ④ 一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 例2)次の3つ全てに該当するもの(同前)。

  ① 異常検査所見A~E、Gのうち2つ以上の所見がある。

  ② 病状を表わす臨床所見が5つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 

【3級】(「弁疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

※「循環器機能障害」については、3級12号及び障害手当金の認定はない(認定基準第3第1章第11節1)。

 

<経過観察に付される3級相当の弁疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第12号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)人工弁を装着したもの(第11節2(9)①)。

  ※人工弁が複数でも、原則として3級相当とされる(同前(注1))。

 例2)次の3つ全てに該当するもの(第11節2(9)①)。

  ① 異常検査所見A~E、Gのうち1つ以上の所見がある。

  ② 病状を表わす臨床所見が2つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「イ」又は「ウ」に該当する。

  ※抗凝固薬使用による出血傾向は、重度のものを除き、認定対象外とされる(同前(注2))。

 

 

11-3:「心筋疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

■循環器機能障害の原因となった請求傷病(心筋疾患)による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第11節1)。

 

【1級】(「心筋疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

<1級相当の心筋疾患による循環器機能障害>

●心筋疾患による循環器機能障害に係る障害の状態が「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、心筋疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第11節1)

 例)次の2つ両方に該当するもの(第11節2(9)②)。

  ① 病状(障害)が重篤で安静時でも心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)がある。

  ② 一般状態区分が「オ」に該当する。

 

【2級】(「心筋疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

<2級相当の心筋疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、心筋疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)次の3つ全てに該当するもの(第11節2(9)②)。

  ① 異常検査所見Fがある。

  ② 病状を表わす臨床所見が5つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 例2)次の3つ全てに該当するもの(同前)。

  ① 異常検査所見A~E、Gのうち2つ以上の所見がある。

  ② 病状を表わす臨床所見が5つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 

【3級】(「心筋疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

※「循環器機能障害」については、3級12号及び障害手当金の認定はない(認定基準第3第1章第11節1)。

 

<経過観察に付される3級相当の心筋疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)次の3つ全てに該当するもの(第11節2(9)②)。

  ① 左室駆出率(EF値)が50%以下である。

   ※肥大型心筋症の場合、EF値が参考とならない場合が多く、臨床所見や検査所見等も参考に総合判断される。

  ② 病状を表わす臨床所見が2つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「イ」又は「ウ」に該当する。

 例2)次の3つ全てに該当するもの(同前)。

  ① 異常検査所見A~E、Gのうち1つ以上の所見がある。

  ② 心不全の病状を表わす臨床所見が1つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「イ」又は「ウ」に該当する。

 

 

11-4:「虚血性心疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

■循環器機能障害の原因となった請求傷病(虚血性心疾患)による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第11節1)。

 

※「虚血性心疾患」:冠状動脈の狭窄や閉塞等により心筋の血流障害を起し心機能障害を来す疾患の総称。狭心症(一過性の心筋虚血)と心筋梗塞(心筋壊死)に大別される。冠動脈疾患(冠動脈病変)と同義。

※「冠動脈疾患」:主要冠動脈に1箇所以上の狭窄、又は冠攣縮(冠動脈の痙攣)が証明されたもの。冠動脈造影検査の施行がなくとも心電図、心エコー図、核医学検査等で明らかに冠動脈疾患と考えられるものも含む。

 

【1級】(「虚血性心疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

<1級相当の虚血性心疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、虚血性心疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第11節1)

 例)次の2つ両方に該当するもの(第11節2(9)③)。

  ① 病状(障害)が重篤で安静時でも常時心不全あるいは狭心症状がある。

  ② 一般状態区分が「オ」に該当する。

 

【2級】(「虚血性心疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

<2級相当の虚血性心疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、虚血性心疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第11節1)

 例)次の3つ全てに該当するもの(第11節2(9)③)。

  ① 異常検査所見が2つ以上ある。

  ② 軽労作で心不全あるいは狭心症などの症状がでる。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 

【3級】(「虚血性心疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

※「循環器機能障害」については、3級12号及び障害手当金の認定はない(認定基準第3第1章第11節1)。

 

<経過観察に付される3級相当の虚血性心疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第11節1)

 例)次の3つ全てに該当するもの(第11節2(9)③)。

  ① 異常検査所見が1つ以上ある。

  ② 心不全あるいは狭心症などの症状が1つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 

 

11-5:「難治性不整脈による循環器機能障害」の障害状態要件

■循環器機能障害の原因となった請求傷病(難治性不整脈)による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第11節1)。

 

※「難治性不整脈」:放置すると心不全や突然死を引き起こす危険性の高い不整脈で、適切な治療を受けているにも拘わらず、それが改善しないもの(第11節2(9)④(注1))。

 

【1級】(「難治性不整脈による循環器機能障害」の障害の程度)

<1級相当の難治性不整脈による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、難治性不整脈の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第11節1)

 例)次の2つ両方に該当するもの(第11節2(9)④)。

  ① 病状(障害)が重篤で安静時でも常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)がある。

  ② 一般状態区分が「オ」に該当する。

 

【2級】(「難治性不整脈による循環器機能障害」の障害の程度)

<2級相当の難治性不整脈による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、難治性不整脈の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)次の2つ両方に該当するもの(第11節2(9)④)。

  ① 異常検査所見Eがある。

  ②一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 例2)次の3つ全てに該当するもの(同前)。

  ① 異常検査所見A~D、F、Gのうち2つ以上の所見がある。

  ② 病状を表わす臨床所見が5つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 

【3級】(「難治性不整脈による循環器機能障害」の障害の程度)

※「循環器機能障害」については、3級12号及び障害手当金の認定はない(認定基準第3第1章第11節1)。

 

<経過観察に付される3級相当の難治性不整脈による循環器機能障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)ペースメーカー、ICDを装着したもの(第11節2(9)④)。

 例2)次の3つ全てに該当するもの(同前)。

  ① 異常検査所見A~D、F、Gのうち1つ以上の所見がある。

  ② 病状を表わす臨床所見が1つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「イ」又は「ウ」に該当する。  

 

 

11-6:「大動脈疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

■循環器機能障害の原因となった請求傷病(大動脈疾患)による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第11節1)。

 

※「大動脈疾患」:大動脈の一部が嚢状又は紡錘状に拡張した病態(大動脈瘤)。

 <高血圧症を伴う場合>

 →本頁「大動脈疾患による循環器機能障害」及び「高血圧症による障害」の障害状態要件参照。

※「大動脈瘤」:嚢状のものは大きさを問わず、紡錘状のものは、正常時(2.5~3cm)の1.5倍以上のもの。

 ◇大動脈解離(解離性動脈瘤):大動脈内膜に生じた亀裂から血液が内膜に流入し、外層と内層に解離した病態。

  ・大動脈解離の発生部位(範囲)によって2つ(Stanford分類A型・B型)に分類される。

 ◇胸部大動脈瘤:胸部(横隔膜より上)に発生した大動脈瘤。

  ・心臓に近い部分から順に、次のように4つに分類される。

   ① 基部(バルサルバ洞)動脈瘤

   ② 上行大動脈瘤

   ③ 弓部大動脈瘤

   ④ 下行大動脈瘤

 ◇胸腹部大動脈瘤:胸部から腹部に亘って発生した大動脈瘤。

  ・大動脈瘤の発生部位(範囲)によって4つ(Crawford分類Ⅰ~Ⅳ)に分類される。

 ◇腹部大動脈瘤:腎動脈より末梢から総長骨動脈分岐部までの腹部大動脈に発生した大動脈瘤。

 

【1級】(「大動脈疾患等による循環器機能障害」の障害の程度)

<1級相当の大動脈疾患等による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」

すなわち、大動脈疾患等の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)心不全を呈する特殊な大動脈疾患で1級相当のもの(第11節2(9)⑤(注5))。

 例2)大動脈疾患と合併症(周辺臓器への圧迫症状等)で1級相当のもの(同前)。

 例3)大動脈疾患の術後の後遺症で1級相当のもの(同前)。

 

【2級】(「大動脈疾患等による循環器機能障害」の障害の程度)

<2級相当の大動脈疾患等による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」

すなわち、大動脈疾患等の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。→障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)心不全を呈する特殊な大動脈疾患で2級相当のもの(第11節2(9)⑤(注5))。

 例2)大動脈疾患と合併症(周辺臓器への圧迫症状等)で2級相当のもの(同前)。

 例3)大動脈疾患の術後の後遺症で2級相当のもの(同前)。

 

【3級】(「大動脈疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

※「循環器機能障害」については、3級12号及び障害手当金の認定はない(認定基準第3第1章第11節1)。

 

<経過観察に付される3級相当の大動脈疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)次の2つ両方に該当するもの(第11節2(9)⑤)。

  ① 胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)により人工血管(ステントグラフトを含む。)を挿入している。

  ② 一般状態区分が「イ」又は「ウ」に該当する。

 例2)次の2つ両方に該当するもの(同前)。

  ① 胸部大動脈瘤(胸腹部大動脈瘤を含む。)により人工血管(ステントグラフトを含む。)を挿入している。

  ② 一般状態区分が「イ」又は「ウ」に該当する。

 例3)胸部大動脈解離に難治性高血圧を合併したもの(同前)

 例4)胸部大動脈瘤(胸腹部大動脈瘤を含む。)に難治性高血圧を合併したもの(同前)

 

※「難治性高血圧」:塩分制限等の生活習慣の修正を行った上で、適切な薬剤3薬以上の降圧薬を適切な用量で継続投与しても、なお、収縮期血圧が140mmHg以上又は拡張期血圧が90mmHg以上のもの(同前(注4))。

 

 

11-7:「先天性心疾患による循環器機能障害」の障害状態要件

■循環器機能障害の原因となった請求傷病(先天性心疾患)による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第11節1)。

 

※「先天性心疾患」:生まれつきの心臓や大動脈等の形成異常の総称。

 ・先天性心疾患には、次のようなものがある。

  例1)心房中隔欠損症(VSD:ventricular septal defect)

  例2)心室中隔欠損症(ASD:atrial septal defect)

  例3)房室中隔欠損症(AVSDatrioventricular septal defect)

  例4)動脈管開存症(PDA:patent ductus arteriosus)

  例5)大動脈縮窄症(CoA:coarctation of aorta):大動脈弓の一部が狭窄している病態。

  例6)大動脈弓離断症(IAA:interruption of aortic arch):大動脈弓の一部が欠損し離断している病態。

  例7)総肺静脈還流異常(TAPVR:total anomalous pulmonary venous return)

  例8)エプスタイン奇形(Ebstein anomaly):三尖弁と右室流入部の奇形。

  例9)ファロー四徴症(TOF:tetralogy of Fallot)

   ・心室中隔欠損、肺動脈狭窄(右室流出路狭窄)、大動脈騎乗及び右心室肥大という4つの特徴をもつもの。

  例10)両大血管右室起始症(DORV:double outlet right ventricle)

  例11)完全大血管転位症(TGA:transposition of the great arteries)

  例12)修正大血管転位症(cTGA:corrected transposition of the great arteries)

  例13)総動脈幹遺残症(persistent truncus arteriosus)

  例14)左心低形成症候群(HLHS:hypoplastic left heart syndrome)

  例15)無脾・多脾症候群(心房内臓錯位症候群)

 

【1級】(「先天性心疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

<1級相当の先天性心疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、先天性心疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第11節1)

 例)次の2つ両方に該当するもの(第11節2(9)⑥)。

  ① 病状(障害)が重篤で安静時でも常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)がある。

  ② 一般状態区分が「オ」に該当する。

 

【2級】(「先天性心疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

<2級相当の先天性心疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、先天性心疾患の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)次の3つ全てに該当するもの(第11節2(9)⑥)。

  ① 異常検査所見が2つ以上ある。

  ② 病状を表わす臨床所見が5つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 例2)次の2つ両方に該当するもの(同前)。

  ① Eisenmenger化(手術不可能な逆流状況が発生)を起している。

  ② 一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当する。

 

※「Eisenmenger(アイゼンメンゲル)化」:左右シャントが右左シャントに転ずること。

 例)左右短絡疾患の先天性心疾患が肺高血圧を来すまで進行し、静脈圧が動脈圧を超えて逆短絡が生じた場合。

 

【3級】(「先天性心疾患による循環器機能障害」の障害の程度)

※「循環器機能障害」については、3級12号及び障害手当金の認定はない(認定基準第3第1章第11節1)。

 

<経過観察に付される3級相当の先天性心疾患による循環器機能障害>

●「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」すなわち、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級3級14号(厚年令別表第1第14号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)次の3つ全てに該当するもの(第11節2(9)⑥)。

  ① 異常検査所見C~Eのうち1つ以上の所見がある。

  ② 病状を表わす臨床所見が1つ以上ある。

  ③ 一般状態区分が「イ」又は「ウ」に該当する。

 例2)次の3つ全てに該当するもの(第11節2(9)⑥)。

  ① 肢体血流比1.5以上の左右短絡がある。

  ② 平均肺動脈収縮期圧が500mmHg以上である。

  ③ 一般状態区分が「イ」又は「ウ」に該当する。

 

 

11-8:「重症心不全による循環器機能障害」の障害状態要件

■循環器機能障害の原因となった請求傷病(重症心不全)による障害の状態が、障害認定時期に政令別表に定める障害の程度に該当するものであること(国年令別表、厚年令別表第1、認定基準第3第1章第11節1)。

 

※「重症心不全」:心機能の低下が極めて高度で、通常の心不全治療を十分に行っても回復困難な状態。

 

【1級】(「重症心不全による循環器機能障害」の障害の程度)

<経過観察に付される1級相当の重症心不全による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」すなわち、重症心不全の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。

 →障害等級1級9号(国年令別表1級9号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)心臓移植をした場合(第11節2(9)⑦)。

 例2)人工心臓を装着した場合又は植え込んだ場合(同前)。

ただし、術後当初は1級と認定されても、1~2年程度経過観察後に症状が安定している場合、臨床症状、検査成績、一般区分表を勘案し、障害等級が再認定される(必ずしも1級が維持されるとは限らない)(同前第1文)。

 

【2級】(「重症心不全による循環器機能障害」の障害の程度)

※「重症心不全」については、3級及び障害手当金の認定はない(認定基準第3第1章第11節1、同節2⑦)。

 

<経過観察に付される2級相当の重症心不全による循環器機能障害>

●「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」すなわち、重症心不全の障害認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。

 →障害等級2級15号(国年令別表第2級15号、認定基準第3第1章第11節1)

 例1)CRT(心臓再同期医療機器)を装着した場合(第11節2(9)⑦)。

 例2)CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着した場合(同前)。 

ただし、術後当初は2級と認定されても、1~2年程度経過観察後に症状が安定している場合、臨床症状、検査成績、一般区分表を勘案し、障害等級が再認定される(必ずしも2級が維持されるとは限らない)(同前第1文)。