不服申立て

 

障害年金の不支給処分等について不服を申し立てる。

 

行政処分を取り消すには、国に対して訴訟を起こすことができます。

ただし、障害年金の受給に関する場合、訴訟を提起する前に、社会保険審査会の裁決を経る必要があります。

1.審査請求

裁定請求(初回申請)の審査官による処分決定(原処分)に不服がある場合、厚生労働大臣(社会保険審査官)に対して審査請求を行い、1人の社会保険審査官の決定を得ます。

2.再審査請求

審査請求に対する前記審査官の決定に不服がある場合、社会保険審査会(厚生労働省内)に対して原処分の取消しを求める再審査請求を行い、合議体による社会保険審査会の裁決を得ます。

3.行政訴訟の提起

社会保険審査会の裁決に不服がある場合、裁決書謄本の送達を受けた日の翌日から起算して6か月以内に、国(代表者は法務大臣)を被告として原処分の取消しを求める訴訟を提起し、東京地裁、東京高裁、最高裁まで争う途もあります。エコ生活とは対極に向かう途なので、全くお勧めすることはできません。社労士の職域を超える仕事となります。専門度及び難易度の高い稀有な事案となるので、受任する弁護士を見つけるのは困難です。したがいまして、事実上の決着は再審査請求までにつくことになります。

 

不服申立ての難易度

実は、同じ事案であっても、どの段階から社労士が関与したかで大きく異なります。

裁定請求(初回申請)の段階から社労士が関与した場合、受給要件の立証が甘い箇所について、予め想定の範囲内として不服申立ても見据えて裁定請求書に添付する資料を充実させて臨んでいます。

そのため、原処分の1枚の紙っぺら(決定通知)のわずかな記載だけでも、立証上補強すべき範囲を狭めることができ、争点について補強する資料や論理構成をすることが容易となります。この場合、審査請求及び再審査請求は殆ど同じ主張内容とすることができ、いずれもその負担は軽くなる、つまり、いずれも難易度は下がるわけです。

これに対し、不服申立ても見据えて初回申請を行っていない場合、原処分の決定通知だけでは不意打ちを受けます。

初診日証明について、相当因果関係を考慮せずに傷病を捉え、初診日が不適切となると、それまでの提出書類が全て無駄となります。障害の程度を証明する診断書について、適切な現症日の診断書の添付漏れ、その内容不備も致命傷となりかねません。病歴等申立書については、他の書類との矛盾記載、曖昧記載、ピンボケ記載(例えば、初診日、障害認定日、請求日における障害の状態や日常生活の状況について記載が薄い場合など)、不利な余事記載(例えば、症状等を手当たり次第申立書に記載した結果、当該請求傷病とは無関係な症状等の記載が混ざる場合など)があります。

これらのリカバリーが後手となるばかりか、不能な場合もあります。そのような場合、審査請求及び再審査請求は、同じ事案であっても難易度が格段に跳ね上がるのです。喩えるなら、7割バッターの打率が2割を切るような感じです。イチロー対高校生投手、イチロー対絶好調メジャーリーガーエース級投手のようなものです。

 

目的は、原処分の取消しを求めること。

被保険者資格や保険料納付については、保険者側が具体的事実を握っており、反証する余地は殆どありません。争う火種となる原処分とは、主として給付等に関する処分(国年法101条1項、厚年法90条1項)を指します。例えば、裁定処分(不支給決定、等級に不服がある場合の支給決定)のほか、支給停止決定や失権決定などがあります。

 

攻守の鍵は、決定通知は1行1語、決定書は1頁1文に顕れる。

裁定請求後には決定通知が、審査請求後には決定書が手に入ります。

いずれも審査官の決定内容が記されたものです。ここで、なぜそのような処分を下したのか、その理由を解読するキーワードやフレーズが出現します。さらっと表現されたものに過ぎず、あなたが十分に納得できることはむしろ稀です。あなたならどのように反証(反論+物件提示)しますか。

例えば、初診日不明で不支給の場合、初診日のみについて反証しますか。それでは足りないのです。初診日要件以外の障害状態要件等については審査されていないのです。ですから、受給要件は全部備えていることを主張せねばなりません。ただ、裁定請求時にしっかりと書類を提出している場合、要件不具備を実際指摘された点、及び将来指摘されうる点を補強する主張を行えばよいことになります。

 

再審査請求の公開審理、意見陳述は2分で勝負。

再審査請求の公開審理は、再審査請求人(代理人)が参加する場合、1案件15分程度です。

公開審理の参加者には、社会保険審査会委員、保険者及び参与がおりますので、主張は簡潔・明瞭・力強く行います。主張すべき要点の強調や補足説明は行えますが、事実上、口頭で新たな証拠となる意見陳述をする時間的余裕はありません。複雑な案件は予め図表等を提出しておきます。公開審理が裁決に影響を与える度合いは、請求人がもつイメージよりも低く、事実上、それまでに提出してきた資料で決着がつけられるものです。

再審査請求の公開審理について、実質的には社会保険審査会委員が書面に基づき裁決を下す儀式、と捉えるならば、遠方者が代理人費用に加えホテル代や交通費の追加負担をしてまで参加する必要があるかどうかは微妙です。

例えば、争点が障害状態要件にある場合、百聞は一見にしかずで請求人本人が参加する意義は大きくなります。反面、医学的所見や障害認定基準等の解釈を巡る争いの場合、本人参加の意義は相対的に小さくなります。

あなたはどう判断されますか。書面による攻防段階で結論が見えるプロにお任せください。

なお、争点から外れた主張は、多数の案件に対応する審査会委員の心証を損ねる可能性があります。特に夏、空調設備がある会議室で扇風機を使うのはエコですが、それ以外にも意図があるのでしょう。

 

審査請求

初回申請(裁定請求)をしてから、順調にいけば、3か月半後には決定が得られます。

年金証書と年金決定通知書が郵送されてきたものの障害等級に不服ある場合や、不支給決定通知の場合もあります。その決定に不服ある場合、1回目の不服申立手段として、審査請求を行うことができます。

このとき、あなた(又は代理人)が初回申請の段階で受給要件の検討準備を十分に行っていたのであれば、審査請求をすることも想定内のことでしょう。

そうでない場合...。あなたはご自身の置かれている状況を薄々感じとられていると思います。

審査請求書の書き方について。基本的には、次のように書面で主張立証します。適宜根拠資料も付けます。

行った請求の根拠条文に基づき、その受給要件を全て満たしていることを主張立証します。

初診日要件については、初診日が特定できるに足る客観的資料を提示します。

障害状態要件(障害認定日要件)については、障害認定基準に照らし個別具体的にご自身の状態がどの障害の程度に該当するのか、診断書や意見書等に照らして主張立証します。

なお、保険料納付要件については、初診日が決まると保険料納付要件の具備不具備も客観的事実として判明するので争点とはなりにくいです。

1枚の不支給決定通知から争点を抽出し、当該処分の違法性を争う(ルールに沿って処分されていないじゃないかと不服を申し立てる)のです。

当事務所では、見えない争点をも想定し、脇を固めた文章を何度も練り上げて審査請求書を書き上げます。

 

審査請求の期限

審査請求の期限は、社会保険審査官の決定通知書が送付された日の翌日から起算して60日以内です。

上記期限を過ぎて審査請求した場合、当該請求は却下されます。ただし、天災等の正当な理由により期限内に請求できなかったこと認められた場合、却下されません。

 

審査請求の方法

文書又は口頭で審査請求を行うことができます。期限内に口頭で請求しておき、書類が整ってから文書による請求(審査請求書の提出)に切り替えることもできます。

 

審査請求書の送付先

<地方厚生(支)局が関東信越厚生局の場合>

〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂1-1-1

 朝日生命浦和ビル3階

 関東信越厚生局社会保険審査官 宛

 Tel:048-615-0200

 

決定書を得るまでの流れ

社会保険審査官が審査請求書を受け取ると、受領通知が来ます(受付日が判ります)。

社会保険審査官の再審理が行われます(審理期間:5か月以上)。

社会保険審査官が認容決定できると判断した場合、決定通知書、年金支払通知書がそれぞれ送付されます。

日本年金機構でも再審理が行われます(審理期間:3か月程度)。

日本年金機構が認容決定できると判断した場合、社会保険審査官経由で処分変更通知(裁定替え通知)とともに審査請求取下書が送付されます(あなたの請求は認めるので審査請求を取り下げて下さいという取扱いです)。この場合、審査請求取下書については、当該審査官に質問することができ、当該審査官宛に送付します。認容決定の具体的内容については、当該審査官が下したものではないため、日本年金機構へ問い合わせることができます。

日本年金機構も社会保険審査官も認容決定できないと判断した場合、その旨の決定書が送付されます。

 

再審査請求

再審査請求の期限

再審査請求の期限は、社会保険審査官の決定書謄本が送付された日の翌日から起算して60日以内です。

上記期限を過ぎて再審査請求した場合、当該請求は却下されます。ただし、天災等の正当な理由により期限内に請求できなかったこと認められた場合、却下されません。

 

再審査請求の方法

文書又は口頭で再審査請求を行うことができます。期限内に口頭で請求しておき、書類が整ってから文書による請求に切り替えることもできます。審査請求日から60日以内に審査請求に係る決定書が届かない場合にも、審査官が審査請求を棄却したものとみなして早期に再審査請求を行うこともできますが、当事務所ではお勧めしません。審査官の見解を知る重要な手掛かりとなる決定書を得る前に再審査請求を行うことは得策でないためです。ただ、明らかに審査官の決定が予見できる場合、早めに合議体で審理してもらうべく再審査請求を推し進めることもよいでしょう。

 

再審査請求の提出書類

社会保険審査会事務担当者(厚生労働省保健局社会保険審査調整室)から取得した「再審査請求書」(1枚目)及び「再審査請求の趣旨及び理由」(2枚目)を提出します。当事務所では、これらを電子ファイルで作成し、印刷したものを提出しています(記載項目は同じですが、レイアウトが若干異なります)。

「再審査請求の趣旨及び理由」について、審査請求のときと同一でなく、主張の整理等に時間を要する場合、「再審査請求書」(1枚目)の提出後、できるだけ速やかに、再審査請求の趣旨及び理由を記載した書面(様式不問、便箋等でもOK)を提出します。当事務所では、当該書面は別紙として詳述したものを提出しています。

代理人の場合、当然委任状も必要です。取下げの授権もあるものです。

 

再審査請求書の送付先

〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2

 社会保険審査会

 事務連絡担当:厚生労働省保健局社会保険審査調整室 宛

 代表Tel:03-5253-1111(内)3222

 

裁決書を得るまでの流れ

社会保険審査会が再審査請求書を受け取ると、受領通知が来ます(受付日が判ります)。

審査請求としての要件を備えているか(受理できるか)否かの要件審理が、原則として受付順に行われます。

要件審理の結果、要件を欠いているときは、受理せず、その旨を記載した裁決書が通知されます。

要件が整っている場合、受理され内容の審理(実体審理)が進められ、関係資料が調査整備されます。

公正及び公平を期す観点から、原則として公開審理が行われ、その半月前に公開審理日の通知が送付されます。

公開審理では、社会保険審査会の合議が公開されます。公開審理には、再審査請求人(代理人)、社会保険審査会委員、保険者及び参与が参加します。再審査請求人(代理人)は、社会保険審査会の事務担当職員の前で再審査請求書に記載すべき事項を陳述します。

公開審理後も必要に応じ資料収集等が行われ、最終的な結論が裁決書によって通知されます。

再審査請求の受付日から、早くて半年、遅くて2年、平均で8か月程度で、裁決書謄本が送付されています。

 

※「社会保険審査会委員」とは、社会保険審査会の合議体の構成員です。社会保険審査会は委員長及び委員5名の計6名の組織です。その中から合議体は通常、審査長及び審査員3名の計4名で構成されますが、委員6名全員で構成される場合もあります。

※「保険者」とは、厚生労働省職員(代理人)です。

※「参与」とは、被保険者、事業主、受給権者等の利益を代表して口頭又は書面による意見陳述を認める者として、厚生労働大臣が指名した者をいいます。厚生年金保険の被保険者及びの事業主の利益代表者各2名、国民年金の被保険者及び受給権者の利益代表者4名の計8名が審理期日に出頭して意見を陳述したり、意見書を提出することができます。

 

第三の道

お財布に優しいエコ的提案。

再申請。

例えば、初めて2級請求。

複数の軽度障害で権利化を図る方法です。

前発障害については、初診日要件及び保険料納付要件が問われませんので、検討する価値があります。

 

既に検討済みだと答えられる方。

その書類整備は的確だったでしょうか?

差引認定の対象外だからといって安易に考えていませんでしたか?

 

あるいは、むやみに傷病や障害を一つの診断書に記載させてしまった方。

むしろ薮蛇となりませんでしたか?

 

重複障害の障害状態要件の再検討。

 

これが解決の糸口になれば、幸いです。