公的年金の併給又は選択

1人1年金の原則

公的年金の併給とは、公的年金を複数同時に受給できる場合をいい、選択とは、併給できない場合に一年金を選択して受給することをいいます。

公的年金の受給要件を満たしていても、1人1年金の原則(一年金選択の原則)に従います。公的年金の支給事由には、障害・老齢・死亡の3つに色分けできますが、異なる支給事由に基づく公的年金同士は併給できません。いずれか一つを選択することになります(国年法20条、厚年法38条)。

したがって、同一の支給事由に基づく公的年金同士では、併給できます。例えば、障害基礎年金と障害厚生年金は、障害という点では同一ですが、障害の原因となった傷病についても同一の場合、つまり、同一の支給事由に基づく場合には、併給できます(厚年法38条1項前段括弧書)。

前発と後発の障害は、同一の支給事由に基づくものではなく、併合して一年金として受給します(国年法31条、厚年法48条)。

同一の支給事由に基づくものであっても公的年金同士ではない場合、受給制限を受けることがあります。例えば、業務上障害について労働基準法に基づく障害補償の受給権を得た場合、障害基礎年金及び障害厚生年金は6年間支給停止となります(国年法36条1項、厚年法54条1項)。

他方、異なる支給事由に基づく公的年金同士であっても、1人1年金の原則の例外として、併給できる場合があります。例えば、障害者の就労を評価し自立を促すため、障害基礎年金と老齢厚生年金の併給が認められています(厚年法38条1項後段括弧書)。

さらに、旧法が絡むと一層複雑になるため、以下では主なものを記載します。

 

併給不可(一年金を選択する)

障害基礎年金と特別支給の老齢厚生年金の選択

■60歳台前半に障害基礎年金と特別支給の老齢厚生年金は、併給できず、いずれか一方を選択します(国年法20条1項後段、同附則9条の2の4、厚年法38条1項後段括弧書、同附則17条)。

 税金面では非課税の障害基礎年金の方が課税対象の老齢厚生年金よりも有利な一方、生年月日、厚生年金加入期間及び給与水準次第で老齢厚生年金の方が有利となる場合があります。

 ※「特別支給の老齢厚生年金」とは、60歳台前半に前倒しで報酬比例部分を受給する老齢厚生年金をいいます(厚年法附則8条)。

 

障害基礎年金と障害者特例による特別支給の老齢厚生年金の選択

■60歳台前半に障害基礎年金と障害者特例による特別支給の老齢厚生年金は、併給できず、いずれか一方を選択します(国年法20条1項後段、同附則9条の2の4、厚年法38条1項後段括弧書、同附則17条)。

 税金面では非課税である障害基礎年金の方が課税対象となる老齢厚生年金よりも有利ですが、生年月日、厚生年金加入期間及び給与水準次第で老齢厚生年金の方が有利となる場合があります。

 ※「障害者特例による特別支給の老齢厚生年金」とは、昭和16年(女子は昭和21年)4月2日以後生まれで、定額部分の支給開始年齢が61歳から64歳へと引き上げられる者が、厚生年金の被保険者でない障害者である場合、定額部分の支給開始年齢前に定額部分及び報酬比例部分を請求することができる老齢厚生年金をいいます(厚年法附則9条の2、同平6改法附則18条~20条)。

 

障害基礎年金と老齢基礎年金の選択

■65歳以降に障害基礎年金と老齢基礎年金は、併給できず、いずれか一方を選択します(国年法20条1項後段、同附則9条の2の4)。この場合、常に有利な障害基礎年金を選択します。

 

併給可(複数年金を受給する)

障害基礎年金と障害厚生年金の併給

■20歳以降に障害基礎年金と障害厚生年金は、同一の支給事由に基づく場合、2階建て年金として、併給できます(厚年法38条1項前段括弧書)。

 

障害基礎年金と老齢厚生年金の併給

■65歳以降に障害基礎年金と老齢厚生年金は、異なる支給事由に基づく場合でも、1人1年金の原則の例外として、併給できます(国年法20条1項後段、厚年法38条1項後段括弧書、同法附則9条の2の4、同17条)。障害者の就労による保険料納付を老齢年金に反映させ自立を促す観点から認められています。